最近TVシリーズにおいては、若手世代が自ら脚本を書いて、監督して、主演して、素晴らしい番組を次々に排出している。ちょっと思い出してみても、『GIRLS/ガールズ』のレナ・ダナムに、個人的にも去年最も好きだった番組のひとつ、ドナルド・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノ)の『Atlanta』、Netflixなどでも、アジズ・アンサリの『マスター・オブ・ゼロ』。それに最近ハマっている、『ガールズ』の続きのような作品、Issa Raeによる『Insecure』などなど。挙げ出したらキリがないほど。
どの作品にも共通しているのは、ハリウッドに長年はびこる”白人男性至上主義”の真逆をいくクリエイター達によるものだということだ。つまり、既存のシステムの中からは、自分達の声が代弁される作品が生まれない。自分達で脚本を書いて、主演するしかないと、思ったのだと思うのだ。私達がラッキーだったのは、彼らにもの凄く才能があったということ。なので、どの作品も大成功している。今年のエミー賞でどのような作品が勝ち残っていくのかにも注目してもらいたい。
1) 『Lady Bird』
そういう兆候が、映画シーンでも見られるようになったということだと思う。グレタ・ガーウィグが脚本、監督した作品は、『Lady Bird』。彼女の自伝的作品で、主演しているのはシアーシャ・ローナン。まず彼女の演技力が活かされているし、この作品、笑えて、切なくて、感動的で、最高。敢えて例えるなら『JUNO/ジュノ』を彷彿とさせるような作品で、小さいながらも、みんなに愛されすでに、もしかしたらオスカーにいくかもしれないとまで言われている作品。心のナンバー1と言いたくなる映画だ。ちなみに、『Lady Bird』には、『Call Me By Your Name』で主演だった美男子君ティモシー・シャラメも出てる。
https://rockinon.com/blog/nakamura/167140
予告編はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=cNi_HC839Wo
2)『Unicorn Store』
『ルーム』で見事主演女優賞を獲得したブリー・ラーソンが初監督した作品が『Unicorn Store』。彼女は、脚本は書いていないのだけど、その代わり主演している。のみならず、『キングコング:髑髏島の巨神』で共演したサミュエル・L・ジャクソンを重要な役どころで引っ張ってきているのも凄い。社会の枠に入れなくて、大人にないたいけど、なりきれない、そんな主人公の成長を、”ユニコーン”との遭遇に例えて描いたキュートな映画。監督として彼女が描きたかったことはしっかりと全うされている作品。
両作品に言えているのは、例えば『ガールズ』、『Altanta』、『Insecure』にもつながる、ミレニアムな気分だ。子供ではないから、世間的には「大人」だけど、大人としては、どうしていいか分からなくて、途方に暮れている。それがそれぞれの立場から鋭い台詞、描写で描かれていてリアル。誰もが身に覚えがあり、共感できる。しかも、それがこれまでのシーンにはなかった境界線を超えていく作品であるという意味で未来は明るい、と思えるのだ。
3)『The Disaster Artist』
ミレニアムな気分とはちょっと違うけど俳優が監督した作品という意味で書いておきたのは、ジェームズ・フランコが監督、主演した『The Disaster Artist』。これが特筆すべき出来映え。これぞ、ジェームズ・フランコらしいばかばかしさに溢れたお腹が痛くなるほど思いきり笑える作品なのだ。ジェームズ・フランコが演じるのは、実在する監督トミー・ウィソー。彼が「史上最悪の映画」と多くの批評家に書かれた『ザ・ルーム』を作る過程を描いている。本当に最高なので要注目!
予告編はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=4qab3TMg42k