JAY-Zが「The New York Times」紙に寄稿している。
https://nyti.ms/2jvZL34
彼は、ミーク・ミルの件を例にして、アメリカの刑事司法制度が黒人にいかに不公平で、実際の罪の重さ以上の刑を受けているのかをここで語っている。
JAY-Zは司法制度の不公平について、過去にTVドキュメンタリー・シリーズ「Time: The Kalief Browder Story」をプロデュースすることでも訴えている。そのドキュメンタリーの記者会見では、「これは、非人間的だ。あまりに残酷で非人間的で、言葉にして語るのも難しいくらいだ。だけど、俺達が声であり、社会なんだ。だから俺達には変化を起こすことができる。すべてを変えることができるんだ。そして俺達の声はこれまで以上に強い。もしここにいる人達全員が、『この16歳の少年に起きたことに同意できない』と訴えたなら、絶対に二度と起きない。それくらいシンプルなことだ」と語っていた。
「The New York Times」紙で彼が語っていることを以下要約。
「今月ミーク・ミルに、保護観察期間に再犯したとして2〜4年の懲役判決が下された。#freemeek のハッシュタグが一瞬にして広がり、フィラデルフィアの市役所前には何百人ものファンがその判決に抗議するために集結した。
これは表面上は、罪を犯したラッパーがしっかりしていないがために、元いた場所に逆戻り、というありがちな話に見えるかもしれない。
しかし、その前に考えて欲しい。ミークは、19歳くらいの頃に、銃とドラッグに関わる犯罪を犯し、8ヶ月の懲役を終えた。そして、彼は、現在30歳だ。つまり、彼は、成人してからの人生すべて、19歳に犯した罪で、保護観察下にある。つまり、ほぼ10年間、どんな小さな罪であっても、彼を刑務所に戻す制度に追いかけ回されていることになる。
そしてミーク・ミルに起きたことは、我々の司法制度がいかに何百万人もの黒人を日々罠に陥れ、苦しめているかの、ひとつの例なのだ。俺はそれを1970年、80年代にブルックリンで育ってきて、目の前で見て来た。やり直しのチャンスを与える代わりに、保護観察というのは地雷だ。ちょっとでも間違ったことをしてしまうと、実際の罪より大きな結果に繋がってしまうのだ。
だから、ミーク・ミルの故郷フィラデルフィアの納税者達は、彼を拘留するために、毎年何千万ドルものを金を使っていることになる。しかも、彼を留置することで、彼がより安全な状況にあるとは誰も言えないと思う。彼が留置されたのは、保護観察期間の再犯のためだが、しかし、彼の検察官も、保護観察官も、ミーク・ミルの再犯は、実刑には値しないと勧告したのだ。それなのに、それを裁判官が却下して、実刑判決を下した。だから彼は留置されているのだ。俺がこの間のダラスのライブを途中で止めて、それについて語りたかったのはそのためだ。
というのも、彼の罪を改めて見て欲しい。
3月に彼は、セントルイス空港で口論となり逮捕された。そこで実際何が起きたのかを録画していた映像が公開された後、彼への起訴はすべて取り下げとなった。
8月に彼は、NYでの自分のビデオ撮影のセットで、バイクで後輪走行して、逮捕された。この起訴は、彼が問題を起こさなければ却下されることになる。
ちょっと考えて欲しい。つまり、起訴は両方とも、取り下げか、却下なのだ。それなのに、裁判官は、彼をそれでも刑務所に送り込んだ。
ミークに関するそのすべてが、今回この原稿を書きたいと思った理由だ。だけど、同時に、そうやって毎日人々は司法制度に罰され、罠にはまっていることを強調する機会でもあると思う。
この制度は、彼らを社会の危険とみなして、彼らを監視し続け、どんな小さな罪でも、彼らを刑務所に戻すことを目標としている。
2015年の時点では、保護観察下にある465万人のアメリカ人のうち3分の1が黒人だ。そして黒人は、白人よりも高い確立で保護観察期間の再犯によって実刑判決が下される。
ペンシルバニア州においては、何万人もの人達が、保護観察下にある。そしてフィラデルフィアの刑務所の人口の半分は、保護観察期間の再犯によるものだ。そして、もし保護観察期間の人々をより公平に暑かっていたなら、刑務所は閉鎖できるくらいなのだ。
だからこそ、フィラデルフィア、そしてアメリカ中で、我々は戦わないといけない。そして、フィラデルフィアにおいては、人種間の平等を実現するために”Color of Change”という組織が裁判所にプレッシャーをかけている。保護観察というのは罠だ。我々は、ミークと、不当に刑務所に送られたすべての人達のために戦わなくてはいけない」
ちなみに、彼がプロデュースしたドキュメンタリーにはあまりに悲痛な現実が描かれている。NYに住む16歳の青年が、高校で友達のバックパックを盗んだと疑われて逮捕される。もし盗んだとしても、普通は3日も刑務所に入れられる程度の罪だ。しかし、彼は実は盗んでいなくて、起訴されていないのに、NYで最も極悪で有名な刑務所に送られた。そこで、予想されていた通り、とんでもない暴力を受ける。彼は31回も尋問を受けたばかりか、なんと2年間も独房に入れられるのだ。彼がそこに3年間もいなくてはいけなかったのは保釈金の1万ドルが払えなかったからだ。そして、ようやく無実の罪で釈放されたのだが、それから2年後、刑務所で受けたダメージが酷すぎて、自宅で自殺してしまうのだ。
予告編はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=Ri73Dkttxj8
この刑事司法制度の不公平については、人種差別のみならず金儲けも絡んださらに深い歴史と問題がある。それについては、Netflixが制作した『13th -憲法修正第13条-』に描かれている。監督はエイヴァ・デュヴァーネイ。絶賛された作品だ。JAY-Zは今、ミーク・ミルの件を元に、これを変える時が来たと立ち上がっているのだ。