【ロラパルーザ通信その2】全秒感涙のフーファイに、えっ?リンプ?!ミーガン、タイラー、ポスト・マローンなどそれぞれが感動だった今年最大規模の夏フェスレポ

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ひとつ前のブログの続きです。

シカゴ市長が、「今年行われる世界で最大の音楽フェス」と言っていたけど、本当かな? 10万人×4日間で行われたロラパルーザに行って来た。フェスを開催した結果クラスターが起きたかなどはまだ分からないので大喜びはできないけど、でももし無事に終了したとしたら、ロラパルーザはやはり最高だった。

初日のトリだったマイリー・サイラスも上手くまとめていたけど、「この1年半にすごく辛い方法で学んだのは――私は、このグッチのジャンプスーツをイタリアからカスタムメイドで送ってもらったりして、エゴが大きくなったりもするけど(笑)、でも、あなた達がいなかったら私なんて何でもないってこと」。「時間さえあればあなた達全員の名前を1人1人ここで読み上げたいくらい感謝している」「これはライブなんだよ。ファッキング・リアルなんだよ」「この日が来るのを、死ぬまで夢見て終わることになるんじゃないかと思ってた」と。

2年ぶりにアメリカで開催されたこのフェスは、アーティストにとっても観客にとっても、なぜフェスが自分にとって必要なのか、大好きなのかを改めて思い出させてくれる最高の場となった。

以下4日間の個人的ハイライト。1人で観た結果なので(笑)、偏りがあるし(ダンス系は全然観てないです。すいません)、観たくても2つ重なっていると物理的には無理なこともあった。ご了承ください。また、前のブログにも書いたけど、次号のロッキング・オンのコレポンでも書く予定なので、ここでは簡単にご紹介。

1)タイラー・ザ・クリエイター:「ニッチ」なのに10年で堂々のヘッドライン

実は、ロラパルーザは、アメリカではHuluで生中継されていた。なので、そのライブ映像全編をタイラーが公開している。ラッキー。こちら。

https://www.youtube.com/watch?v=QYajBFraLJ0

タイラーがライブ中に言っていたけど、「デビューしたばかりの頃に、俺のやってることはニッチすぎて、絶対に続かないと言われた。でもそんなこと言われたから何クソと思って頑張れた。見てみろ、それから10年、俺はロラパルーザのヘッドライナーを務めてる。そいつは家で今頃腹を立ててるぜ」と。この日のライブはまさにこんなにエッジがあって、本当にクールなものが、よく10年生き残ったな。そればかりかグラミー賞を受賞したり、ヘッドラインを務める位置に辿り着けたなあ、と実感するものだった。全体的に3つの構成で、最新作〜原点〜ヒット曲という、キャリアを総括する完璧なセットリスト。後半何度も大合唱になっていたのにも感動した。観客と心でつながっているのが分かったし、フェスをまとめ上げていた。

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フェスサイトでは独自のテントで自らのグッズGOLFも4日間売っていたけど、いつ見ても長蛇の列だった。

2)えええ? リンプ・ビズキット!?

ラインナップで発表された瞬間から、リンプが今フェスに出て来たらどんな感じなのか? とにかく怖いもの観たさだった。彼らはセカンド・ステージでの登場。ミーガン・ジー・スタリオンがメイン・ステージで15分後に始まるというスケジュールだったので、最初の1曲だけ観て走った。始まりにプリンスの“Purple Rain”が流れ、フレッド・ダーストがバックステージから「えっ、雨なの?」ととぼける演出。しかも登場したら何この格好!? カツラ? ビースティ・ボーイズの“Sabotage”のMVみたいなふざけたルックスだ。日曜日のお父さんみたいな中途半端にダサい服。夏なのに厚着だし、ポケットに手を入れて出てきた。ウェス・ボーランドも仮面をかぶっていた。

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    pic by Pooneh Ghana for Lollapalooza 2021

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プリンスを最初に流したのも、この格好も、過去のフレッド・ダーストやリンプと距離を置く装置だったのかなと思った。「リンプ・ビズキットのライブを初めて観る人?」と訊いたらほとんどの人たちが手を挙げていた。20代くらいの観客が相当数集まっていたのも驚いた。「1999年のウッドストックなんてファックだ(彼らも出演)。でも、今日は1999年みたいなライブをするからな」と、“Thieves” (Ministry のカバー)を演奏して開始。NMEが“Nookie”の映像をポストしていた。以前のようにマスキュリニティ丸出しで登場したら多分観客は引くだろう。過去のリンプと良い塩梅で距離を置いているのが分かるし、フレッドは2021年的なリンプの提示の仕方をしっかりと察知しているんだなあと思った。

3)フェス最大の熱狂ミーガン・ジー・スタリオン

「18万人以上! 現時点でロラパルーザ最大の観客と言われた」とミーガンがポスト。

https://www.instagram.com/p/CSAyavinnan/

3日目のメイン・ステージでトリの前に登場したミーガン。間違いなくそれまでで最大の観客だったし、全日を通しての最高の密集度だった。みんなどうしても前で観たい、ものすごい熱気があったということ。ただし、会場には1日に10万人までしか入らないので、18万人は何かの間違いだと思う。

フレッド・ダーストから走って彼女を観て、メインストリームの音楽が思い切り進化しているのを実感できた。彼と同じように世間に中指を立てているわけだけど、怒りの対象もその表現も全然違う。めっちゃカッコよくお尻をトゥワークしながら、舌を出して、「ホット・ガールの人、メイク・サム・ノーイズ!」と、正に“Hot Girl Summer”を地で行く内容。大ヒット曲“Savage”や“WAP”でも大盛り上がり、「大学の学位取った人? 卒業する人?」をそこで平行して語るのも最高。つまりそういうもの全てを女性が手に入れるのは当然の権利であり、それを阻む人たちに中指を立てているのだと思った。カッケー!

AC/DCザ・ローリング・ストーンズガンズ・アンド・ローゼズなどのTシャツで作った衣装もカッコ良かった。

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4)「人生最高の夜」と言ったポスト・マローン堂々のヘッドライン

途中で、アコギを弾く場面があり、ザ・ホワイト・ストライプスの“Seven Nation Army”の出だしを弾いたら大喝采。「俺にあんな良い曲書けるわけがないよ。しかもこれはライブの中でも一番つまらないところだから、トイレに行くなら今だよ」とまで言っていた。それがポスト・マローンの最大の強みかもと思った。

全然ダメな自分を正直に曝け出すことで共感を得ているような気がする。楽曲のトーンにも表現されていて、無理やり「ここで歌え」みたいな押し付けがましさが全くない。みんなをゆるゆると迎え入れてくれる。しかも、花火も上げまくり。最初から3曲連続くらいで上げていたし、最後も今年最大の花火。しかしみんなで歌えるヒット曲をたぶんこのフェスの中で最も持っている。今回のフェスで最高のシンガロング率だったと思う。“Motley Crew”も、Tyla Yawehを迎えて“Tommy Lee”もやった。いつもことだけど、「ありがとう」を100万回くらいと、「人生最高の夜」とまで言ってオーディエンスに感謝していた。

ファンがポストしたフル・ライブ映像。
https://youtu.be/Hklk1_uueRU

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5)出し惜しみなしのマイリー・サイラス

ローリング・ストーン誌がポストしてたファンのライブ映像。
https://youtu.be/kQdznUquELc

これはマイリーがポストしたライブ映像。



1曲目の途中でピクシーズの“Where is my Mind?”が演奏されているけど、ビリー・アイドルは登場するし、ブロンディも演奏するし、シェールも演奏するし、テンプル・オブ・ザ・ドッグもカバー、ブリトニー・スピアーズを支援するし、LGBTQコミュニティをサポートするし、ニプシー・ハッスルを追悼するし、G Herboに、ウィズ・カリファ。

マイリーも言っていたけど、今週正にアメリカでチャート1位のザ・キッド・ラロイも登場。可能な限り様々なものを共存させている。そして最後は、“Party in the U.S.A.”で大合唱。この曲がヒットした当時は、あまりに流行りすぎていて好きになれなかったけど、この日久しぶりに聴いたら、しっくりと来た。とにかく、初日のヘッドラインで彼女は出せるものは全て出し尽くしたという入魂のライブだった。

また特筆するべきは、今回のロラパルーザには、LGBTQコミュニティの人達がたくさん来ていたということ。ライブ中もLGBTQコミュニティは自分のコミュニティであり、いかにここがそのコミュニティにとって大事な場所なのかを語っていたけど、これはマイリーの力だと思った。フェスのムードを設定してくれた。

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6)サプライズで登場し、大合唱を巻き起こしていたマシン・ガン・ケリー

ボーッと歩いてたらどこからともなくぎゃーーーと歓声が聞こえた。ただごとではない感じで、行ってみたら、マシン・ガン・ケリーがサプライズで登場して、ものすごい騒ぎになっていた。とにかくどの曲も大大大合唱だった。


Kerrang!にポストされてたファンの映像。
https://twitter.com/candybloomxx/status/1421637910722490370

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7)2時間入魂の感涙ライブ。フー・ファイターズ

ゆっくりと会場を見渡すように出て来て、“Times Like These”を噛みしめるように歌い始めてから、「俺たち250曲もあるのに、2時間しかない」と言って、時間を惜しむように曲間も最小限に、時間を最大限に使い、途中ビー・ジーズも披露。お決まりのテイラー・ホーキンスによるクイーンのカバー“Somebody To Love”では、デイヴ・グロールがドラム・ソロを披露。7歳の娘に“ハッピー・バースデイ”を歌い、もう1人の娘とは、Xの“Nausea”をカバー。最後に、「俺たちはサヨナラは言わない。お前たちが観に来てくれる限り、俺たちもここに戻ってくる。サヨナラの代わりにこれを弾く」とめちゃクサいことを言って、でも、“Everlong”のギター・リフを弾き始めた瞬間、もう涙が溢れそうになった。フーファイのライブは、全瞬間が濃厚な心に刺さる体験で、相変わらず熱いデイヴさんを久しぶりに生で観て、ずっと感動で胸がいっぱい。

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実は、それまでの3日間は20代が主な観客だったため、まさか大トリのフーファイに観客がいなかったらどうしよう、なんて不安を抱いていたんだけど、全くの無駄だった。私のいた所から見た限りでは後ろの後ろまで埋まっていたし、最後の曲でデイヴさんが、「後ろの人たち、俺たちの音が聴こえてるか?」と確かめていたくらい、最後まで埋まったままだったのだ。もちろん、この日だけ来たみたいな、40代以上のフーファイ・ファンもたくさんいたけど、それだけだと、メインステージに入る4~5万人は埋まらない。この日初めてフーファイを観たような人たちもたくさんいたのだ。

ちなみに、デイヴがステージで、「今日初めて観た人たち。これまで何で待ってたんだよ」と言ったのも彼らしかったが、「でも最高の日に来たよ。今日のライブが史上最高だから」と言ったのにもジーンとした。いちいち感動的で、そして何より、フェスに一番必要な様々な年代の、趣味も違うような人たちが、音楽への感動で一緒になれる瞬間。フーファイのライブがこの日にもたらしたのは、そんなフェスだからこその、奇跡的な瞬間だった。さすが大トリ。あまりに素晴らしくて、4日間全ての思い出がフーファイのライブで一色になるくらいの勢いだった。

これがライブの1曲目“Times Like These”の映像。
https://www.youtube.com/watch?v=edG0tW0styA

また、Kerrang!がポストしていたけど、デイヴの一番下の娘さんオフィリアが7歳になったとみんなで“ハッピー・バースデイ”を歌い、もう1人娘がいるから彼女とも一緒にXのカバーを披露した。

https://www.youtube.com/watch?v=9OoNrqGwKX4&feature=youtu.be

自分はロラパルーザの1回目から来ていたこと、主宰したペリー・ファレルがいなかったら俺たち誰も今ここにいなかった、とペリー・ファレルにも感謝を述べていた。

【ロラパルーザ通信その2】全秒感涙のフーファイに、えっ?リンプ?!ミーガン、タイラー、ポスト・マローンなどそれぞれが感動だった今年最大規模の夏フェスレポ - pic by Lauren Jonespic by Lauren Jones

フー・ファイターズのセットリスト
1. “Times Like These”
2. “The Pretender”
3. “Learn to Fly”
4. “No Son of Mine”
5. “The Sky Is a Neighborhood”
6. “Shame Shame”
7. “Breakout”
8. “My Hero”
9. “These Days”
10. “Walk”
11. “You Should Be Dancing” (Bee Gees cover)
12. “Somebody to Love” (Queen cover with Taylor Hawkins on vocals)
13. “All My Life”
14. “This Is a Call”
15. “Happy Birthday” (Grohl sings to his daughter Ophelia)
16. “Nausea” (X cover with Violet Grohl on vocals)
17. “Best of You”
18. “Monkey Wrench”
19. “Everlong”



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