1)トム・モレロ&カニエ・ウェスト
トム・モレロが、ソロ作となる新作『The Atlas Underground Fire』を発売するが、最近行ったマイケル・ムーアのポッドキャストの中で、この作品を作ることになったきっかけが、「カニエ・ウェスト」と語っていて仰天した。
トムはこう語っていた。
「これはパンデミックがあったから生まれた作品だった。17歳から、2020年3月までノンストップで作曲、レコーディング、パフォーマンスをしてきたけど、その全てが止まってしまった。それでインスピレーションがこれまでとは全く別のところからきたんだ。
カニエ・ウェストのインタビューを読んでいたら、彼がヒット作数枚のボーカルを携帯のボイスメモに録音したって言っていたんだ。僕は、自宅にスタジオがあるけど、どうやって使えばいいのか分からないから、(コロナ禍では)レコーディングできないと思っていた。
でもそのカニエの記事を読んで、ギターを自分の携帯に録音してみた。それをエンジニアから、アーティストから、プロデューサーから世界中に送ってみた。おかげで、世界的なロックンロールのペンパル・コミュニティとでも言えるものが出来た。
それと、僕はギターを”未来”だと思っているから、その僕のギターを目標として掲げてされいれば、カントリー・スターのクリス・ステイプルトンでも、ブルース・スプリングスティーンとエディ・ヴェダーが歌うクラッシックなヘヴィ・メタル曲”Highway to Hell”でも、パレスチナの若きDj、Sama Adbulhadiでも、エベレストでボーカルをレコーディングしたMike Posnerでも、スウェーデンのRefusedも、ブラジルのBring Me The Horizenも、みんな一緒に世界的なコミュニティができると思っていた。
僕自身は、完璧に1人で不安になっていたわけだけど(笑)、世界中に、ロックンロール、EDM、ヒップホップ、カントリーウエスタンの、ペンパルを作り、このアルバムができたってわけなんだ(笑)。(ロックダウンの最中に)自分はミュージシャンなんだ、って確認する作業でもあったんだよね」
トム・モレロがカニエ・ウェストのインタビュー記事を読んだっていうのが驚き。一体どこやって見つけたのかめちゃくちゃ気になる。ちなみに、想像できると思うけど、このポッドキャストは、”Sleep Now in the Fire”の思い出話なども出てくるし、隅から隅まで超面白い。2回聴いてしまったくらいだけど、トム・モレロが、Eストリート・バンドと初めてリハーサルした時のハラハラ話なども最高だ。
2)”Highway to Hell"
その中からひとつだけ選んで紹介すると、このアルバムに収録されているボスとエディによるAC/DCの”Highway to Hell”の共演の経緯。
それで思い出したけど、私は、スプリングスティーンがトム・モレロも参加したそのバンドと初めて南アフリカでライブをすることになり、世界中のジャーナリストが招待されて南アまで行くという生涯最も思い出に残る取材をさせてもらったことがある。それは余談として、その時子供たちが成長したからようやく遠くにツアーできるようになったと言ってた。それで、このコラボは、彼らがオーストラリアに行ったことがきっかけで行われた。
すでに音源が公開されているが、これ以上ないくらいの重厚な組み合わせだ。
なんていい話。「僕は6年間Eストリート・バンドとツアーしたけど、ある時、ボン・スコットの故郷のオーストラリアのパースにいた。僕は、ボン・スコットのお墓参りをして、敬意を表したかった。それで夜中11時頃に、パースのお墓に行ったんだけど、驚いたことに、ボン・スコットのお墓は、簡単に分かるようにはなってなくて、見つけれられないでいた。そしたら真っ暗闇の中に、バイクでやって来た人がいて、第二次世界大戦のドイツ軍のヘルメットをかぶり、Tシャツに書かれていたことを読んでも、この人なら、ボン・スコットのお墓がどこか絶対に知っているはずだと思った。実際知ってたんだ。
そんないきさつでお墓にお参りして、ホテルに戻ったらブルースがいた。それで『ブルース、Eストリート・バンドのサークルと、AC/DCのサークルがオーバーラップする可能性ってあるかな?』って訊いたんだ。『考えたことなかったけど、今晩考えるよ』って言われた。そんなわけでそれから数日間、”Highway To Hell”の練習をした。
その後、メルボルンの8万人収容する巨大なサッカー・スタジアムでライブする日があったんだけど、エディ・ヴェダーがソロ・ツアーでその時ちょうどいて、僕らのライブを観に来たんだ。それでブルースの部屋をノックして「ブルース、僕らは今オーストラリアにいる。ここはAC/DCがキングとみなされている国だ。それで”Highway to Hell”はロックロールの啓示だ。今日エディ・ヴェダーに参加してもらってAC/DCの”Highway to Hell”でショーを開始するっていうのはありかな?」って訊いた。
そしたら、彼は『それはすごく良いアイディだと思う』って言って実現したんだ。
このアルバムでは、若い才能のあるアーティストにたくさん参加してもらったけど、最後にレコーディングした曲が”Highway to Hell”だった。それを僕は自分のロック・ブラザーズと曲を作りたかった。それで史上最高のロックンロール曲を、史上最高のロックンロール・シンガー2人に歌ってもらったというわけなんだ」
これがその時の映像。
3)トム・モレロの10歳の息子さんのギター・ソロ
トム・モレロが去年イギリスに住む天才少女Nandi Bushellにギターをプレゼントする良い話があったけど、彼女はその後もフー・ファイターズ始め、数え切れないくらいのロック・スター達と共演。
https://rockinon.com/blog/nakamura/194521
今回はなんと、トム・モレロと、トム・モレロの息子さんの10歳のRomanと共演。
地球温暖化の危機を訴える曲”The Children Will Rise Up”を発表した。
ジャック・ブラックとグレタ・トゥーンベリもカメオで出演する。
Romanのギター・ソロがあるけど、お父さん譲り! ギターの裏に書かれた”Rise Up”も!
これが彼のデビューということになるけど、それがチャリティだというところもさすがトム・モレロの息子さん。
ストリーミングなどによる利益は、SOS Pantanalに寄付される。今後も楽しみだ。
https://twitter.com/sospantanal
トム・モレロの新作は10月15日に発売される。
https://tommorello.com/
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