全米チャート1位を10回獲得中のシザのNYライブが感動的かつ超エンタメ。フィービー・ブリジャーズ、カーディ・Bもサプライズ登場したNY初日を観た。

全米チャート1位を10回獲得中のシザのNYライブが感動的かつ超エンタメ。フィービー・ブリジャーズ、カーディ・Bもサプライズ登場したNY初日を観た。 - pic by SACHYN MITALpic by SACHYN MITAL

シザの最新作『SOS』は、現在USチャートで10回も1位を記録。これからまだ記録更新する可能性も大だし、2010年以来1位を10回以上獲得したアルバムはたった8枚しかない。つまり、『SOS』はすでにこの10年を代表する人気を獲得した作品と言って過言ではないのだ。

この作品は、去年、年間アルバムチャート発表後に出たため、年間チャートの多くには入っていなかったけど、でも、その後メディアの評価を集計して平均値を出すサイトでは、なんと90点の高評価が付いている。
https://www.metacritic.com/music/sos/sza/critic-reviews

つまり人気も評価も絶頂という時に、NYのマディソン・スクエア・ガーデンでキャパ約2万人×2日間のライブを行い、しかも即完だったので、盛り上がらないわけがない。

全米チャート1位を10回獲得中のシザのNYライブが感動的かつ超エンタメ。フィービー・ブリジャーズ、カーディ・Bもサプライズ登場したNY初日を観た。 - pic by SACHYN MITALpic by SACHYN MITAL

NYの初日、3月4日のライブを観てきたけど、最初から最後まで大合唱の上に、この日はなんと、彼女と共演しているフィービー・ブリジャーズカーディ・Bがサプライズで登場! 会場に電気が走るくらいの熱狂だった。以下がその映像の一部。





ボーイジーニアスは、3人で観に来ていたようで、一緒にダンスしている映像をポストしている。めちゃかわいい。

また、カーディ・Bも映像を投稿。

ツイートでもコメント。

「SZAのショーは最高!!!! 絶対行った方がいいよ…..バニラとラベンダーのアロマみたいなバイブスでマジ大好きだった!」


フィービー・ブリジャーズは、もちろん新作で共演している”Ghost in the Machine”の時に登場。
「この曲は今日ライブで初めて演奏するんだよ!」とシザが歌い始めて、フィービー・ブリジャーズのパートになった時に、彼女が突然出て来たので会場絶叫。シザは後で、「他の州の人達に怒られるかも(笑)」と言っていたくらいだった。

しかも、その上、カーディ・Bまで出るとは誰も思っていなかったのだが、なんと、フィービー・ブリジャーズの直後に出たから尚更大盛り上がり。これもライブ初パフォーマンスとなる”I Do”を披露した。しかも、1曲だけではなくて、カーディとGloRillaの”Tomorrow 2”まで披露。会場が割れんばかりとなり、カーディがそこにいるだけで放つエネルギーとカリスマ性があまりに破格で衝撃的だった。

シザが「子供が2人もいてそれだけでも大変なのに、わざわざ時間を作って出てくれて本当にありがとう」と言っていた。

ライブの詳しい内容については、これから発売のロッキング・オン誌の5月号のコレポンのページでもレポートを書くつもりなので、ここでは簡単にまとめるけど、素晴らしかったことのひとつは、彼女の非常にパーソナルでエモーショナルな告白の作品が、2万人の会場にも伝わるくらいの素晴らしくアーティスティックでかつ壮大なエンターテインメントとして昇華されていたことだ。

彼女のライブはこれまでも様々なシチュエーションで観て来たけど、1200人キャパの単独ライブでも、フェスでも、ケンドリック・ラマーとのレーベルのツアーでも、彼女の音楽に観客が思い切り共感し吸い付けられるようにみんな前に押し寄せて、大合唱が起きる。彼女自身も、友達に話しかけるように、その曲ができた理由やダメな元彼氏の話などをするので、会場がどんな大きさだったとしても、まるで直で1人1人に語りかけるかのようにパフォーマンスができる類稀なる才能とカリスマ性の持ち主だった。

しかし今回は、1200人の会場から、巨大なアリーナになったのに、会場のエネルギーは1200人のままだった。ほぼ全曲でその大合唱が鳴り響く。私の席は2階の後ろの方だったけど、周りの女子は全ての曲でこの曲を聴きたくて来たくらいの勢いで全身全霊お腹の底から絶叫していた。だから、このライブは、彼女の曲とファンの共感する気持ちと大合唱で、可能な限りシンプルなセットにしました、と言っても成り立ったと思うのだ。しかしそうしなかったことに感動した。その逆で、可能限り上を目指したものだったのだ。

このライブは、シンプルさの逆で、彼女が、1200人からアリーナを2日間即完できるくらいの大きなアーティストに成長したこと、より優れた作品ができたこと、ファンが増えたこと、会場が拡大したこと、その様々な面での彼女の今の偉大さを可能な限りのアイデア、演出や、ダンス、ストーリー性、そして最新技術を駆使した巨大LEDスクリーンを使って、非常にエモーショナルに、かつアーティスティックに、そして超エンターテインメントにしていたのが、強烈なインパクトを残し、予想を遥に超えた感動のライブになっていた理由だ。

例えば、「あなたが他の人といてハッピーなところを見たくないから」「元彼を殺してしまいたい」とまで歌うほどパーソナルな告白がされている作品を、最高にアーティスティックでかつ最大限にエンターテインメイントなライブとしていたことが、感動的だったのだ。もし、中身のないアーティストだったらそれは単なるハリボテのように見えたと思うのだけど、シザはその逆なので、こんなパーソナルな告白がこんな超エンタメにできるなら、これぞ今のポップミュージック、ライブカルチャーの最高の形であり、音楽シーンの未来は明るいとすら思えたくらいだった。

チケットは即完どころか、ダフ屋では、当日になっても一番安くて6万円!(汗) この日のライブは、セカンド・アルバムを5年も待ったファンも、チケットが全然取れない中なんとかして集まったファンの期待も全く裏切らない大満足の内容だった。

ライブは始まりからものすごくドラマチック。

会場が暗くなったら観客は絶叫。巨大なボックス型のLEDが上がりその中からシザがアルバムのジャケットと同じ、大海の中で、1人ポツンと座って登場した。しかも後ろにもさらに巨大なLEDスクリーンがあってそこにも美しくも巨大で飲み込まれそうな海が映し出されていた。そこで”PSA”を歌い終わるとなんとシザがそこから海に飛び込んだからびっくり。そこで、再び前方のスクリーンが降りて、『SOS TOUR』『出演シザ』と映し出され、盛り上げる生バンドの演奏が終わると、再びスクリーンが上がる。そして今度はそこから巨大な船が出て来て、シザはそのデッキにダンサーと登場。

全米チャート1位を10回獲得中のシザのNYライブが感動的かつ超エンタメ。フィービー・ブリジャーズ、カーディ・Bもサプライズ登場したNY初日を観た。 - pic by SACHYN MITALpic by SACHYN MITAL

”Seek & Destory”をムーディーに披露したり、また”Conceited”がマッシュアップされた”Notice Me”など『SOS』の曲で始めて、エリカ・バドゥの”Bag Lady”をカバーするのも今回の見どころだ。そこからフィービーとカーディ・Bが続けて出たので、会場は爆発する勢い。

ライブは全体で4つのアクトに分かれていた。

”Smoking on My Ex Pack”でAct IIが始まり、よりポップパンク的な”F2F”のサビでは、思わず胸が一杯になり泣きそうになってしまったほど。しかし”Does in the Wind”あたりからスクリーンに映し出される巨大な海の波が高くなり、ギターソロがダークにドラマチックに響き、嵐になる。大雨が映し出される中、シザとダンサーが甲板で嵐に立ち向かうかのごとくアップテンポにダンスを披露して”Low”。シザが倒れ込みドラマチックなダンスを観せるとそれだけでまた大喝采となった。ギターソロで再びドラマチックに盛り上げると、SOSのモールス信号が響き渡り、船が嵐で難破する。

そこからAct IIIとなり、今度はなんとシザが、救命ボートに乗って、宙に浮き、プリンセスのような真っ白のドレスを着て、スローでドリーミーな”Supermodel”, ”Special”を披露。会場を宙に浮いたまま後方までゆっくりと飛んで行った。会場の後方には、灯台が立ち、暗闇の中に光を放っている。後方に座っているファンはそこでシザに最も近づけるので再び絶叫と大合唱だ。中でも盛り上がったのは、アコギでファンも歌詞を噛み締めるように合唱した、メロディの美しさがとりわけ際立った”Nobody Gets Me”。続けてソウルフルな”Gone Girl”で感動も再び極まる。

この日のライブは、つまり、『SOS』というタイトルのアルバムに沿って、全体としてストーリーがあったのだ。大海で孤独で1人思いにふけるところから始まり、やがて船が嵐に襲われ、救命ボートで助けられる。

しかしそのファンタジーのような瞬間から、最後のAct IVでは、アスレチックな衣装に着替え、リアルな世界に戻って、アクティブに活動。アップテンポで軽快な”SOS”から、Doja Catとの”Kiss Me More”、さらに、大人気曲”Kill Bill”では、赤いシャドーの前で、チェーンを振り回していた。この最もダークなアイデアをドリーミーに歌うところが最高な曲だ。会場でも最も盛り上がった曲のひとつだった。さらに、“I Hate You”からファーストで最もヒットした”The Weekend”と人気の曲が続いて本編が終わる。

そしてアンコールがまた最高に美しかったのだけど、最初と同じ場所に戻り1人で座り、今度は背景に美しい夕陽と星空が映し出されて”Good Days”。”Kill Bill”では「殺す」と言っていた「元彼」を「もう恋しく思わない」「心に太陽を/心にいつも良い日を」と言って過去のネガティブな思いを忘れ、前進しようと誓うのだ。孤独に始まったこのライブは、楽しみから、ドラマから、そして夢、逃避があり、そして地上に降りて、リアルと戦い、心の平穏へと辿り着くという、彼女の曲を通して描かれた軌跡が、感動と大エンターテインメントで体感できる最高のライブだった。しかもなんと2時間たっぷりで、全31曲。今あるものを全て出し切っているライブなのだ。

Variety誌は、この後、テイラー・スウィフトビヨンセという、ポップミュージックの頂点の2人がツアーをするけど、シザのライブを超えるのは相当難しいかも、とまで書いていた。

この日のファンは、20代の女子が圧倒的で、男子は彼女と一緒に来ている人か、ゲイの男子かで、全体としては本当にわずかしかいなかった。女子はみんなシザと同じようなカーゴパンツとショート丈なパフィーなジャケットを着ている人が多かったのもかわいかった。

前座は、オマー・アポロ。今のシザの前座を務めるなんてこんなラッキーなアーティストもいないと思ったけど、彼観たさに観客も早くから会場に詰めかけていたのでファンにとってはむしろラッキー。彼も、この機会を最大限に活かすべく思い切りムーディなR&B, ソウルから、ギターをかき鳴らすロックサウンドに、ヒップホップに影響された曲など、幅広いポップサウンドで才能を見せつけた。”Evergreen”が1番の盛り上がりとなっていた。

全米チャート1位を10回獲得中のシザのNYライブが感動的かつ超エンタメ。フィービー・ブリジャーズ、カーディ・Bもサプライズ登場したNY初日を観た。 - pic by SACHYN MITALpic by SACHYN MITAL

シザは、ニューヨークの隣の州ニュージャージーの出身なので、この日家族が全員来ていると言っていたけど、翌日は、自分が育った場所の近くでこのステージ立てることが嬉しい。感謝している、と涙ながらに語っていたそうだ。

以下セットリスト。
Act I
1. PSA
2. Seek & Destroy
3. Notice Me (with "Conceited”)
4. Love Galore
5. Broken Clocks
6. Forgiveless
7. Used
8. Bag Lady (Erykah Badu)
9. Blind
10. Ghost in the Machine (with Phoebe Bridgers)
11. I Do (Cardi B cover with Cardi B)
12. Tomorrow 2 (Glorilla & Cardi B cover with Cardi B)
13. Shirt

Act II
Smorking on My Ex Pack (with “Too Late”)
14. All the Stars
15. Prom
16. Garden
17. F2F
18. Drew Barrymore
19. Doves in the Wind
20. Low

Act III
Open Arms
21. Supermodel
22. Special
23. Nobody Gets Me
24. Gone Girl

Act IV
25. SOS
26. Kiss Me More (Doja Cat cover)
27. Love Language
28. Snooze
29. Kill Bill
30. I Hate U
31. The Weekend

Encore
32. Good Days



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