なんとジミー・ペイジがサプライズで登場して”Rumble”をパフォーマンス。レイジ、ミッシー・エリオット、シェリル・クロウなどが「ロックの殿堂」入りした式典を見た。

なんとジミー・ペイジがサプライズで登場して”Rumble”をパフォーマンス。レイジ、ミッシー・エリオット、シェリル・クロウなどが「ロックの殿堂」入りした式典を見た。 - pic by THEO WARGO / GETTY IMAGES FOR THE ROCK AND ROLL HALL OF FAMEpic by THEO WARGO / GETTY IMAGES FOR THE ROCK AND ROLL HALL OF FAME

11月3日に毎年恒例の「ロックの殿堂」入り式典が開催された。去年はロサンゼルスで開催されたが、今年はNYブルックリンのバークレイズ・センターで行われたので観て来た。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンから、ケイト・ブッシュなどが殿堂入りしたのだけど、なんと式典で最も驚いたのは、ジミー・ペイジが登場して”Rumble”をパフォーマンスしたこと。

映像はこちら。

観客が撮影した映像。
https://youtu.be/00jt7_T5WoI?si=sJAKmUjX6vroMhtg
https://youtu.be/bDBDqNmYSdI?si=d7iBAOYCppHqqN-9

ジミー・ペイジは、リンク・レイが殿堂入りの時に、映像で殿堂入りのスピーチを行ったのだけど、その映像が終わった後に、なんの紹介もなくいきなり本人が登場してパフォーマンをしたのだ。

私は会場の中でも一番遠くの席に座っていたので、スクリーンで観ても、まさかジミー・ペイジが来るとも思っていなかったので、本当にジミー・ペイジなのか目の錯覚なのか、よく分からないまま終わってしまった。その次に、スピーチをしたバーニー・トービンが、ジミー・ペイジと言ったのでようやく本当だったと分かった次第だ。それくらいの驚きだった。

ジミー・ペイジはリンク・レイの殿堂入りスピーチでこう語っていた。

「僕は、リンク・レイのロック殿堂入りスピーチができて、非常に誇りに思うと同時に、たいへん光栄に思っています。

ギタリストの中で、この殿堂入りに値する人、聴いた人の態度を変えてしまう人がいるとしたら、それはリンク・レイだと思うのです。
僕が初めてリンク・レイを聴いたのは、”Rumble”でした。
それはBBCラジオで流れるような音楽とは違っていて、ジュークボックスで聴いたのです。
初めて聴いた時に、あまりに衝撃的で、
『これは何なんだ?』と思いました。
当時14歳で、まだギターがほとんど弾けなかった僕に、莫大な影響を与えました。
そこには勢いと強さとパワーがあり、
しかし、それ以上に、大胆不敵だったのです。とにかく驚異的でした。
それが、僕にとって何がクールで、何が傑作なのかと、6本のストリングスで作れるドラマを、僕の体と意識の隅々まで浸透させました。
それは教えられるようなものではなくて、感じるものであって、幸運であれば、理解できるようなものなのです。
僕のヒーローであるリンク・レイの殿堂入りスピーチができることを、本当に嬉しく思うと同時に光栄に思います」

と語る映像が消えた後に、本人が登場してギターを弾いた。
ジミー・ペイジが登場しなくても、殿堂入り式典は十分豪華な内容だったので、その上にこんな巨大なサプライズを用意できるところがアメリカのショー作りの一流なところだなとも思った。

今年殿堂入りしたアーティストは以下の通り。

●パフォーマー部門
ケイト・ブッシュ
シェリル・クロウ
ミッシー・エリオット
ジョージ・マイケル
ウィリー・ネルソン
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン
ザ・スピナーズ

●ミュージカル・インフルエンス・アワード
DJクール・ハーク
リンク・レイ

●ミュージカル・エクセレンス・アワード(ソングライターに贈られる)
チャカ・カーン
アル・クーパー
バーニー・トーピン

●アーメット・アーティガン・アワード(パフォーマーではないが音楽産業に従事した人に贈られる)
ドン・コーネリアス(『ソウルトレイン』司会者、創設者)

その他、ショーのハイライト。

1)始まりでいきなり、シェリル・クロウとオリヴィア・ロドリゴが共演。さらにスティーヴィー・ニックスとピーター・フランプトンも。


2)締めくくりは、女性ラッパーとして初(!!)の殿堂入りを果たしたミッシー・エリオットのゴージャスなメドレー。スピーチでは、ヒップホップ50周年という記念すべき年に自分が女性ラッパーとして初めて殿堂入りするというその光栄に感動し、感極まって泣いていた。

会場にお母さんが来ていて、この日なんと初めて彼女のパフォーマンスを生で観た、と言っていたのでびっくりした。母は教会に通っているような人だったので、彼女のパフォーマンスは過激すぎたのだと語っていた。

またヒップホップ50周年ということもあり、DJクール・ハークも殿堂入り。彼も、壇上に上がった瞬間に感極まって泣いていた。


3)レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは、トム・モレロのスピーチは素晴らしかったけど、内容的には「レイジはここにはいないけど、戦え」というものだったので複雑な心境になった。
トム以外のメンバーは来なくて、パフォーマンスもなしだったのだ。

なんとジミー・ペイジがサプライズで登場して”Rumble”をパフォーマンス。レイジ、ミッシー・エリオット、シェリル・クロウなどが「ロックの殿堂」入りした式典を見た。

レイジは、事前にパフォーマンスがあると発表されていなかったし、インスタのバンド公式アカウントには「ロックの殿堂」入り式典について何のコメントもなかったので、一体どうなるのかと思ってたら、トム・モレロだけが来てスピーチをした。

トムは、始まりでこう言った。

「僕の名前は、トム・モレロです。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのメンバーの4分の1に当たります。
僕は、ブラッド・ウィルク、ティム・コマーフォード、ザック・デ・ラ ・ロッチャと音楽的化学反応を幸運にも共有できたことを心から感謝しています。
しかし、多くのバンドがそうであるように、僕らは、多くのことに関してそれぞれが違う意見を持っています。それは、『ロックの殿堂』入りすることに関しても同様です」


つまり、トム以外のメンバーは、「ロックの殿堂」入りには賛成ではなかったということだと思う。しかし他のメンバーがいない中で、トム・モレロのスピーチはすごく筋の通った感動的な内容でもあり、これまで彼が言い続けてきたこととも一貫していた。

「僕がレイジのファンから学んだことは、音楽は世界を変えられるということだった」と語り、
レイジがデビューする前に、彼らの音楽を初めて聴いた通りかかった人に言われたのは、
「君たちの音楽を聴いていると闘いたくなる」だったこと。

さらに、本当の革命というのは予期していなかったような人達、作家や、経済学者、大工などが起こして来たけど、サルバドール・アジェンデが言ったように「音楽がなければ革命は起きない」。「だから、革命的な意図を持ったミュージシャンが、観客を飛び跳ねさせて、地面を揺り動かせたら、そこから何が達成できるのか、誰にも分からないと思うのです」

「だけど僕に、音楽から聴こえてくるのはこれです:世界は自然には変わらないということ」

「歴史的に、世界を変え、前進させ、革命的なことをしてきた人達は、お金も、力も、勇気も、知性も、クリエイティビティも、今これを観ている人達以上に持っていたわけではありません。世界というのは、普通の人達が、これ以上耐えられないと、国のために、より人間的で平和な地球のために、立ち上がったおかげで変わったのです。
僕は、今日それを祝福するためにここに来ました。

ファンには、よく何をすれば良いか?と訊かれます。
まず3つのことから始めましょう。
ひとつめ、夢は大きく持ち、簡単に落ち着くのはやめましょう。
ふたつめは、妥協することなく、自分が本当に望む世界を目標に掲げましょう。
そして3つめは、僕らを待つのはやめましょう」

と言われた時にガックリ来た(涙)。

「レイジはここにはいません。でもあなた達はここにいます。僕らが目標とした仕事はまだ完結していません。
だからここからはあなた達が、Testify(証言)する番が来たのです」

「レイジを観る機会がなくて、ガッカリしたなら、自分たちでバンドを作って、そこで言いたいことを言ってみてください。
またあなたが人間なら、手遅れになる前に、地球のために立ち上がってください。

明日、レイジを大音量で聴いてみてください。
そして不公平のために戦ってください。
問題が表面化していたら、それは世界を変える時なのです」

「最後に母のメアリー・モレロに感謝を捧げます。
母は、現在は退職していますが、公立高校の先生でした。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのファンであり、生涯ラジカルであり、そして数週間前に100歳になりました。
その母にここで、こう語るように言われました。
歴史というのは、音楽と同じで、ただ起きるものではありません。
それはあなた達が作るものなのです。

どうもありがとうございました」

実は私は、今回の「ロックの殿堂」入りではレイジは恐らく出ないだろうと思っていたので、当初は、チケットは買っていなかった。しかし、ザック・デ・ラ ・ロッチャの足が治ったみたいで、10月に、ラン・ザ・ジュエルズのコンサートに出演したので、それを観てレイジ出るのかもと思って急いで買ったのだ。

しかし、そう簡単にはいかなかった。去年観たレイジのライブは、これまで観たレイジのライブの中でも最高の内容だったため、日本を含めた世界中の人たちに観てもらいたいと思うのだけど、なかなか複雑なようだ。残念だ。


4)ジミー・ペイジの後に出たのがエルトン・ジョンで”Tiny Dancer”をパフォーマンスする豪華さ。

彼の長年のパートナーである作詞家のバーニー・トーピンが殿堂入りしたため、パフォーマンスとなった。

バーニーのスピーチも感動的で、今回の殿堂入りは、創設者であるヤン・ウェナーが直前に役員をクビになる騒動があった。それは彼が今年出版したインタビュー集に男性白人アーティストしか掲載されておらず、なぜ黒人アーティストと女性アーティストが1人もいないのか、NYタイムズ紙に理由を訊かれて、「基準を満たしていない」と答えたことに始まった。

さらに女性アーティストも、黒人アーティストも、知的なレベルにおいて「そこまでの能力がない」と語ったのだ。それで役員から即クビとなった。それを受けて、トーピンは、「女性アーティストも、黒人アーティストも、その能力がある」とスピーチの中で明言して拍手喝采となっていた。


5)ケイト・ブッシュをセイント・ヴィセントがカバー

ケイト・ブッシュも来なかったが、殿堂入りしたことの驚きと感謝のメッセージを発表していた。
https://www.katebush.com/news_article/rock-roll-hall-of-fame/


6)ウィリー・ネルソンには、恐らくこの日最大の拍手が贈られていた。彼へのアメリカ国民の敬意が感じられた。
シェリル・クロウ、クリス・ステイプルトン、デイヴ・マシューズと共演。デイヴ・マシューズの「緊張しているんだ」と言いながらも笑えるスピーチも良かった。


7)ジョージ・マイケル
ミゲルなどがパフォーマンスしたのだけど、この日、そうそうたるメンツが揃っていた中でも、改めてなんて強烈なメロディ、強烈なボーカル、強烈な個性とカリスマ性だったんだろうと実感。

アンドリュー・リッジリーのスピーチが誠実で、いかに彼に敬意を抱いているのが伝わってきたのが良かった。成功したバンドが、仲違いして終わるようなことが多いので。「ワム!のルックスが良くない方です」と謙虚に語って笑わせていたけど、個人的にワム!のルックスが悪い方と思っていたことは全くなかったことも気付いた。


8)ロビー・ロバートソンの追悼も超豪華。
再びエルトン・ジョン、シェリル・クロウ、クリス・ステイプルトン、ブリタニー・ハワードによるザ・バンドの”The Weight”のカバー。


9)チャカ・カーンとH.E.R.とSiaが共演


10)ザ・スピナーズからドン・コーネリアスの殿堂入りで、ステージが『ソウル・トレイン』を再現した時の華やかさが圧巻だった。

式典の始まりで、殿堂入りの役員が、「今回殿堂入りするアーティスト達は、それぞれ全く違う世代とジャンルですが、全員にアティテュードがあり、若者文化に多大なる影響を与えたということで、『ロックの殿堂』入りに値します」と言っていた。

オリヴィア・ロドリゴとシェリル・クロウの共演に始まり、ミッシー・エリオットのメドレーで華やかに終わった式典には、個人的には、創設者の1人であるヤン・ウェナーの発言に対する「ロックの殿堂」なりの反発の表明でもあったかなとも思ったし、今の時代をしっかりと意識、反映しているとも思った。

この式典は、「世界のディズニープラスで生配信されている」と言っていたけど、日本では多分配信されていなかったのではと思う。これから、2024年1月1日に、アメリカではABCで放送され、その後、HULUとディズニープラスで配信が開始する。さらにAppleMusicでも音源が聴けるそうだ。日本ではどうなるのか、今問い合わせしているけど返事はないので、分かったらお知らせします。



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