Facebook社員、劇場貸し切りで『ソーシャル・ネットワーク』鑑賞!

Facebook社員、劇場貸し切りで『ソーシャル・ネットワーク』鑑賞!

アメリカで10月1日『ソーシャル・ネットワーク』が正式に公開された。Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグがハーバード大の寮で、Facebookを創設した2003年のできごとを軸に、野心と成功と裏切り、孤独、傷心などを描いたこの物語だが、Facebook側は当初から今作はまったくの「フィクション」と批判的な態度を貫いてきた。実際、役員は映画の変更を求めたのだが、スタジオ側は受け入れずに、スタジオ側とはそこで決裂している。

しかし、スポークスマンが、「Facebook激動の時代を祝福するために、この映画を観に行くことにした」と発表。「この作品は面白いかもしれないと思った」と大人な発言。もちろん皮肉だと思うけど。

Facebookが出かけたのは、特別試写でもなんでもなく、普通の劇場。しかし1200人の社員が自由に観られるように、劇場2つを貸し切りにしたそうだ。公開日の金曜日に会社を半休にし、”遠足”として、社員全員が劇場に向かったそうだ。マーク・ザッカーバーグは、映画を観ないと言っていたものの、すでに姿を観たという情報も出回っている。この上映にも出かけたかもしれない?!

ちなみに、そのおかげもあってか(?)、『ソーシャル・ネットワーク』は週末の興行成績23ミリオンドル(制作費は40ミリオンドル)で全米1位を獲得している!!

現在のところ批評家的には絶賛のこの作品だが、すでにHuffington Post など各人気ウェブサイトなどから激しいバックラッシュが起きている。

本当のマーク・ザッカーバークとあまりに違うということから、Facebookを利用している今の僕ら世代の心境などどこにも映し出されていないというものまで。つまりローリング・ストーン誌ピーター・トラバースの言う、「この10年を定義する」というのは、一体どの10年を言っているのか?という批判など出て来ている。

実は私ももう一度観に行ってしまったのだが(笑)、私が行った劇場では1時間ごとに上映されていたにも関わらず、夕方から夜の回はすべて売り切れだった。

最近流れているTVCMを観て改めて気付いたのは、監督名がクレジットで出る時に、脚本家アーロン・ソーキン(写真左)の名前も同列に同じ大きさで一緒にクレジットされるということ。これは珍しい。しかし、この弾丸ように積み重ねられる会話のフォーマットは、脚本家アーロン・ソーキンの得意とするところで、彼がクリエイーターであり脚本家でもあったアメリカの人気TVドラマ“ザ・ホワイト・ハウス”を見たことがある人にはこれが彼のものであることは一目瞭然だ。そして、今作はその最高峰と言える。

前にも書いたけど、その逆に、デヴィッド・フィンチャー作としては、今作は最もフィンチャーらしくない作品であり、この悲劇とも喜劇とも言える物語のストーリーテリングに徹したという点においてフィンチャーの新境地なのだ。しかしこの作品をフィンチャーが描きたかった理由は、主人公に若き日の彼自身を映したからだと思う。

ソーキンは、この物語の中に、”フィクション”はなく、Facebookサイドが問題視している、セックス&ドラッグの過剰さについては、むしろ実際起きたことよりも、減らしたくらいだ、と言っていた。どんなドキュメンタリーでもそうであるように、映画になってしまったらそこには間違いなくクリエイターの視点と主観が入る。だから本当に誰の目にも正しい”伝記”を作るのは不可能だと思うが、少なくともソーキン&フィンチャーによるマーク・ザッカーバーグの物語が、これだけ様々な意見と視点を生み出しているということ事態、キャラクターに映し出されている物語の深さを証明しているのではないかと思う。

さらに、彼を”悪者”に描いているという意見もあるが、個人的にはまったく逆だと思う。最後のシーンはむしろ同情の気持ちで一杯になるし、さらに彼について知りたい気持ちになる。

ちなみに、本物のマーク・ザッカーバーグは、この映画が公開されるタイミングで、人気テレビ番組”オプラ・ウィンフリー”に出演し、彼の出身地であるニュージャージー州ニューアークの学校になんと100ミリオンドル!!!!(約100億円)を寄付したのだ。ダメージコントロールか???とすら思えてしまうのだが。まあ、最年少のビリオネアである。100億円くらい税金でもっていかれるより寄付したほうがいいのだろう。さらに面白かったのは、その番組で彼の家が紹介されたのだが、まるでビリオネアの住む家ではなく、ちょっときれいな大学生の寮みたいな感じだったということ。金を手に入れることが、彼の夢だったわけではないのだろう。

で、無感情に描かれたマーク・ザッカーバーグに対し、作品の中のエモーションの軸になっているのは、アンドリュー・ガーフィールドが演じる”親友”。アンドリューがかっこ良すぎる件についていつも書きたいと思っているのですが、長くなりすぎるので別枠で!
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