アカデミー賞への道その4主演編ディカプ伝記ものでオスカーを狙う

アカデミー賞への道その4主演編ディカプ伝記ものでオスカーを狙う

不定期連載、アカデミー賞への道その4です。


すでに上映された映画の中で最も人気がある&手堅いと言われている作品は現時点では、総合的に『THE ARITST』と『THE DESCENDANTS』なのですが、主演男優部門に食い込んできているのが、レオナルド・ディカプリオ。クリント・イーストウッド監督の『J.エドガー』で、元FBI長官を演じています。


個人的には、ディカプリオは、『ザ・ビーチ』の前と後で大きく映画の選び方が変わってしまったと思っていて、『ザ・ビーチ』でのダニー・ボイルとの撮影の後、「もう2度とインディ映画には出たくない」的な発言をしていたのが、印象的でした。


実際その後、若年寄か、といような、どっしり安定した巨匠監督、またはステイタスの固まった監督との仕事しかしていません。


もちろん演技力も映画も素晴らしいものが多いので文句はないのですが、どうもポイリティカリー・コレクトすぎて、俳優としてつまらない……と思ってしまうことがしばしばです。その点、ブラッド・ピットの選択のほうがスリリングです。


今回も、巨匠イースウッドなわけですが、期待できたのは、脚本を書いたのが『ミルク』のダスティン・ランス・ブラックであり、このエドガーにゲイや女装癖の噂があったということ。つまり、FBI長官として大成功を収める裏での深く複雑な人間像というものが、ここで浮き彫りになるはずと思えたのです。


だから、彼のここ最近の演技の中でも、最もリスクのある役だと思ったのです。


それで結果は、大きな部分においては、これまでと同じでした。というのも、そのゲイだったことや、女装癖が私が期待してたように、大きなパートを占めていなかったからです。


彼のポリティカリー・コレクトな部分の一番の欠点は、その完璧さ故に、観客を感情的に巻き込んでいかないところだと思います。ただし、この作品の場合は、彼が正に人間的に人と距離を持った人であるところがポイントでもあるので、そこが上手く作用していたのです。『アビエイター』で演じたハーワード・ヒューズにも重なるところがあると言えます。またあまり共感できるキャラクターではないのだけど、後にずっしりとエドガーという人物について考えたくなるような、そんな重さと余韻を残す演技でもありました。


また、ディカプリオは眉間に皺の思い切り力の入った演技が最初から最後まで続くので、この映画の中で、唯一観客が呼吸できる箇所というのは、彼の部下であり、愛人役を演じたアーミー・ハマー。彼が思い切り人間的に観えるのです。


そんなわけで、私はアーミー・ハマーの演技のほうが好きだったのですが、それは、ディカプが、トム・クルーズ化しているからかもしれないとも思いました。つまり、力が入りすぎていて脇役が光ってしまうという現象。もちろん脇役は主演がいるからこその受けの演技ができているわけですが。


ディカプはブラッド・ピットと違って、巨匠が好きなくらいなので、絶対にオスカーが欲しくて欲しくて仕方ないはず。そして、伝記映画はオスカーを非常に獲りやすいジャンルです。現時点では、主演男優として非常に良い位置に付けていると思います。とりわけ、ジョージ・クルーニーはすでにオスカーをもらっているわけだし。また、サイレント映画のフランス人俳優に持っていかれたら、ディカプ悔しくて仕方ないだろうなあ、とも思います。と考えると是非ここ何年かの数作と合わせ技で、彼にオスカーをあげて欲しい気もします。


そうするとようやくリラックスして、再び危険な役にチャレンジしたり、眉間の皺演技もなくなるかもです。オスカーよ、どうかディカプを解放してくれ。
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