ウォルター・アイザックソン著のS.ジョブズの大ベストセラー伝記本『ステーブ・ジョブズ』の映画化権は、ソニーが買っていたのですが、その脚本を『ソーシャル・ネットワーク』、『マネーボール』で鬼のように素晴らしい脚本を書いたアーロン・ソーキンが書くことになりました! 今日の映画界の大ニュースです。
そもそも『ソーシャル・ネットワーク』も『マネーボール』もテクノロジーと異端児と革命に関わっていた作品だと思うので、ソーキンが書くのがぴったりと誰もが思っていました。両作品ともソニー制作だし。
しかし、それ以前にソーキンがジョブズが亡くなった後に発表したエッセーが感動的なものだったので、この映画化権が買われた瞬間に誰もがソーキンが書くしかないと決めて付けていました。
そのエッセーはもう読んだ人もいるかもですが、ジョブズが亡くなる前に電話で築かれた友情について。
http://www.thedailybeast.com/newsweek/2011/10/09/sorkin-on-jobs.html
彼は一度もジョブズに会ったことがなかったそうですが、電話を通じての友達だったのです。ジョブズから彼に電話してきたのだそうです。前半は省略して。
「僕がスティーブから受けた最後から2番目の電話は、僕のTVシリーズが打ち切りになった時だった。『落ち込んでいないといいんだけど』と彼は言った。
僕は、なぜ僕に一度も会ったことない人が貴重な1日の60秒間を使って、僕に電話をかけてくれるだろうと思った。きっと彼は本当に優しい人に違いない。そして、大舞台で失敗するということがどんな気分なのかも分かっているに違いない、と思ったんだ。
だけど、僕が忘れられないのは、彼から受けた最後の電話だった。彼はピクサーの脚本を僕に書いて欲しいと言ったんだ。
僕は『ピクサーの映画は大好きで、すべての映画は少なくとも2回ずつ観ているし、すべての映画はそれぞれが小さな奇跡のような映画だと思う。でも、僕はそれには向いてないような気がする』と言ったんだ。
スティーブ:どうして?
僕:うんと、僕には生命のないもの(アニメーション)をしゃべらせることができないと思うから。
スティーブ:君が一度言葉を吹き込めば、それはもう生命のないものではなくなるよ。
僕:いや正直言って、どうやってああいう物語を語ればいいのか分からないんだ。僕にはまだ幼い娘がいて、僕がピクサーの映画を書くと言ったら彼女は大喜びするに違いない。でも、だからこそ、ピクサー史上、唯一にして最悪な映画を書いて、彼女をがっかりさせるわけにはいかないんだ。
(長い沈黙)
スティーブ;そうだなあ……だったらそれについて書けばいいよ。
僕:スティーブ――。
スティーブ:一度ここに来てくれないか。中を案内してあげるから。
それで僕は、それではお言葉に甘えてそのようにします、と言ったものの、それきりにしてしまった。
だけど、僕はいまだにそのピクサー映画のことを考えている。そして、それこそがスティーブの残したレガシーなんだと思う。僕を考えてもいなかったような新しいところへ向かわせてくれるということ。そして、それを僕がこうしてMacで書いているということ」
スティーブ・ジョブズの叶わなかった夢とも言えるソーキンならさらに心のこもった脚本を書いてくれるはずです。
ちなみにこれはアシュトン・カッチャーが主演するほうの映画ではありません。個人的には、ジェームス・フランコか、ライアン・ゴスリングに演じてもらいたいです!
監督や主演が決まったわけでもないのに、昨日の映画界の大ニュース。ソーキンがいかにスターであるかの証拠でもあります。