NYが恋に落ちた。今聴くべき&今観るべきフランク・オーシャン最新ライブレポ&映像

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素晴らしいアルバムを完成させるというのは、ひとつ当然大事なわけだけど、しかしそれが様々な理由によってプラスアルファーの力を発揮してしまうことがある。そんなマジックを今アメリカで起こしている男、それがフランク・オーシャンだと思う。

以前ご紹介したように、彼は最新作『チャンネル・オレンジ』発売の直前に、自分が19歳の時(現在24歳)に男の子に恋をしたことを告白した。いくらアメリカが現在ゲイの結婚を合法化する方向に向かっているとは言え、キャリアを考えるといまだ危険と言えるその告白は、フタを開けてみれば、むしろアメリカを虜にした。リークを恐れて正式発売より1週間前にデジタルのみで発売された最新作は、即座にビルボード2位となったから。
http://ro69.jp/blog/nakamura/69904

ただ、肝心なのは、彼の告白が単にセンセーショナルだったからチャートの上位になった、というわけでないということ。その告白があまりに正直で、あまりに美しい文章で綴られていたからこそ、人の心に思いきり響き、誰もがこのアルバムを聴いてみたいと思ったのだと思うのだ。そして、この新作の素晴らしさもそこにあるような気がする。彼の正直な告白が、あまりに美しいメロディと、美しい声で歌われている、というそれに尽きると思う。

オッド・フューチャーにも所属し、カニエ・ウエストからJay-Z、ビヨンセにも曲を提供する優れたソング・ライターにしてプリンスからスティービー・ワンダーとも比較されるR&B界の新星。アメリカのメディアもこの新作を賞賛しているのだが、個人的に彼の素晴らしいところは、その音数の少なさにあるように思う。これは誰も言ってないけど、初めてライブを観た時は、だからジェイムス・ブレイクに似ていると思ったくらいだった。これだけすべてを選べる環境にありながら、ここまで選び抜くその圧倒的なセンスの良さと、そして自信が。

さらに、これも初めてライブを観た時(キャパ600人)にも思ったけど。
http://ro69.jp/blog/nakamura/60809

会場が大きくなっても(キャパ3000人)、彼はステージ上でマイナスイオンを放つくらいの勢いで、あまりに落ち着いているのだ。ちょっとこの映像を見てもらいたい! そもそもこれだけの脚光を浴びていながら、1曲目いきなりSADEの"By Your Side”のカバーにしてアコギ演奏。自分はイスに座って登場という超落ち着きっぷりなのだ。最初のライブの時もそうだったんだけど。

で、これは3曲目に演奏した”Thinking Bbout You"。とろけるかと思いました。
http://www.youtube.com/watch?v=mxXF2nCIX0M

"Crack Rock"私が好きな曲(笑)。
http://www.youtube.com/watch?v=A2H86Dvcz1A&feature=channel&list=UL

これは”Bad Religion" 。ここに男の子との恋が告白されている。
http://www.youtube.com/watch?v=7NeTi8ubvQo&feature=channel&list=UL

これは最後の曲。ビヨンセより上手いと言われている”I MISS YOU"
http://www.youtube.com/watch?v=G7qJRAat5dw

フランク・オーシャンの落ち着きっぷり! 分かってもらえます? そして最後の最後まで続く大歓声!

ライブ中彼は、言葉数も少なかったけど、印象に残っているのは、「数週間前に僕が言ったことのせいで、世間の人達が大騒ぎしたけど、僕には関係ない。だって、これが僕の人生なんだから」と言ったこと。

私が行くライブは、”旬”なバンドであることも多く、そうするとそれこそピッチフォークでも読んでいそうなひや〜っとした白人のおシャレさんが結集することがよくあるのだけど、このライブでさらに感動したのは、白人も、黒人も、アジア人も、ゲイも、ストレートも、あらゆる人達が集まっていたということ(若い世代が大半だったが)。そして、彼のパフォーマンスによって、観客のもっと実態のあるリアルな感情が露になったような気がしたこと。フランク・オーシャンのマジックというのはつまりそれなんじゃないのかと思うのだ。人が恋をして、恋に破れる痛み、という誰もが味わったことのある普遍的な感情をすべての人とあまりに美しい方法で強烈に共有することにより、会場をひとつにしてしまうということだ。

というわけで、アルバムを是非聴いてみてください。批評家の中には、途中で入るノイズが邪魔で作品の価値を下げているという人もいたりします。ローリング・ストーン誌は、5つ星中の4つ星です。ピッチフォークは9.5点。みなさんは、どうでしょうか?2012年振り返った時に、今年の1枚になることは間違いないです。
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