森は生きている、1stアルバム『森は生きている』について
2013.08.09 15:05
東京・武蔵野で活動する6人組、森は生きている。
8月21日にリリースされるファーストアルバム『森は生きている』が頭から離れない。
でも、どこがいいのかを説明しようとすると、非常にむずかしい。言葉を重ねれば重ねるほど遠ざかる気がする。
なぜかというと、このバンドの音楽は白いキャンバスの上に何かを描いていく音楽ではなくて、むしろゴタゴタと絵の具を塗り重ねたキャンバスを、丁寧に、少しずつ、漂白していくような音楽だからだ。
「シティ・ポップ」というカテゴリーがあって、このバンドもそのカテゴリーで語られることが多いのだけれど、聴いているとむしろ真逆じゃないかと思う。都市のモダンで無機的で洗練された景観を背景に、そこで生きる人々の息吹やわずかにそよぐ風やかすかに聞こえる音、そういった前景を描くようなシティ・ポップだとするなら、森は生きているが表現しているのはその背景と前景をごたまぜにして「自然」や「人間」へと帰し、いわば「都市」という幻想を解体するようなものだと思う。武蔵野という街の「郊外」の空気感とも違う、現実と夢が紙一重の世界観は、たとえばはっぴいえんどが「風街」と名付けたものとよく似ている。
アスファルトの上の黄ばんだ声を聞くのはもうごめんさ
(“断片”)
輪郭を失った 四次元の街では
何も始まらず 何も終わらない
退屈も喧騒も 初対面の顔で
人見知りして 通り過ぎていく
(“ロンド”)
日々の泡に包み込まれ
君も僕も包み込まれ
泡となる
(“日々の泡沫”)
この音楽、ただのグッドタイム・ミュージックではないんじゃないか、じつはかなり攻撃的なことを歌っているんじゃないか、そんな気がしている。
聴いてみてね。