私が初めてASIAN KUNG-FU GENERATIONのライヴを観たのは、人生で初めて行った夏フェス・ROCK IN JAPAN FESで彼らが初めて同フェスのトリを務めたという、初モノ尽くしの2011年のことだった。
アジカンのことは、子供のような言い方をするならば「世界の違う人たち」だと思っていた。画面やイヤホンなど、何かを介さなければ聴くことも見ることもできなかった彼らを肉眼生音で体感できたあの日、断トツで印象に残っているのが本編最後に演奏された『ワールド ワールド ワールド』収録の“転がる岩、君に朝が降る”だった。
あの曲で彼らは、私が想像していた世界を越えてきたのだ。
ロックバンドが世界を塗り変えたいと歌い、その想いをタイトルにしている。なんなら3回も繰り返してしまっている。「日暮れから夜明け」というテーマを13曲で表現したこのアルバムは、ポップなんて言葉でくるりと丸め込めるほど大人しくはない。真夜中を歌う“ナイトダイビング”だってこちらを眠りに就かせる気なんて一切ないし、立ち止まる為の曲は一曲も入っていない。彼らはずっと走り続け、ずっと転がり続けては、私たちにこう呼び掛けている。
《セカイヲカエヨウ ソコカラナニガミエル?》(“或る街の群青”)
同作のリリースから8年が経った今も、私にはその景色の正解は分からない。きっとアジカン自身もそうだろう。それでも彼らはロックを転がし続け、光を照らし、その景色を一望できる世界まで私たちを導き続けてくれている。アジカンが歩んできた20年という年月は決して短くないし、彼らはこれまでに多大な功績を残している。それでも変わらず、歌う。
《だけど僕らはまだ何もしていない、進め》(“アフターダーク”)。
ASIAN KUNG-FU GENERATION、20年のその先へ。(峯岸利恵)
※記事初出時、冒頭の紹介文に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。