「退路なきロック」の極致
《何笑ってんだよ/何うなずいてんだよ/おめえだよ/そこの そこの そこの/おめえだよ/おめえだよ》と時空を超えて胸倉に掴みかかってくる“奴隷天国”のブルータルな爆発力と、《凍えそうな日よ/家路を急ぐ人たちよ/俺も帰ろう 遠回りして/家に帰ろう》と聴く者すべての冷えた心を至上のメロディで温める“寒き夜”の文学性がまったく矛盾なく――いやむしろその対極の合わせ鏡こそが、宮本浩次のシビアに荒ぶる魂を何より厳然と物語っている6thアルバム。『エレファントカシマシ5』まで続いた歌詞重視の作風から、デビュー当時のバンド感への回帰を目指したという今作は同時に、骨が見えるほどにあらゆる無駄や惰性を削ぎ落としたソリッドなエレカシサウンドの迫力と、沸々とたぎりまくる衝動の詞世界を高次元で融合させることに成功した作品でもある。《ああ死ぬ覚悟なきろくでなし》(“浮世の姿”)、《死にざまだろうが男はよ》(“道”)……退路なきロックを極限まで体現しきった、どこまでも熾烈な快盤。(高橋智樹)
収録曲:
1.奴隷天国
2.太陽の季節
3.絶交の歌
4.おまえはどこだ
5.日曜日(調子はどうだ)
6.浮世の姿
7.果てしなき日々
8.いつものとおり
9.道
10.寒き夜
※『ROCKIN'ON JAPAN』2016年1月号より転載
過去のレビューはエレファントカシマシのアーティストページをご確認下さい。
http://ro69.jp/artist/2218
次の更新は2017年3月12日(日)7:00です。(毎日7:00、19:00公開予定)