昨日リキッドルームで行われたジェイク・バグのライブが震えるほどに良かった。
1stアルバムからメロウで円熟した最新作に至るまでの楽曲がアコースティック・ギターのみの伴奏と共に歌われる90分間のライブであり、彼の音楽の核心にある純粋な魅力を、まさにそのままの形で手渡されるような体験だった。
まずギタープレイの表現の豊かさに改めて驚かされる。“Saffron”、“Broken”、“Southern Rain”で美しく爪弾かれるアルペジオ、“Slumville Sunrise”、“Seen It All”等のザクザクと金属的に響くコード・ストロークと、楽曲に応じて丁寧にスタイルを変え、彼のミュージシャンシップの高さと技術的な幅ををこれでもかというほどに見せつけてくれた。
何よりそんなシンプルな形で演奏される楽曲が、今更言うまでもなく、あまりにもすばらしい。それぞれの曲には豊かな起伏があり、あらゆる時代のメロディが刻印され、一曲ごとに多くの感情が往来していく。そして最新作の“How Soon the Dawn”から必殺の“Lightning Bolt”に至るまで、削ぎ落とされたアレンジが故に、すべての曲が持つ凄まじい強度があらわとなっていた。
また、今回はジェイクが非常にこまめに観客とコミュニケーションを取っていた姿も印象的だった。ライブ半ばではリクエストを募り「トゥー・フィンガーズ!」と声が上がれば「いい曲は全部後にやるから」と苦笑いし(もちろんそんな事はない!)、他にも「45分しか練習してないから、ミスするかも」と言ってビートルズ超初期の隠れた名曲である“Like Dreamers Do”(『アンソロジー1』に収録)をロマンティックに歌い上げたりと、適度にリラックスした姿が何とも微笑ましかった。
シンプルなセットで観客とコミュニケーションを取りつつも、ひたすらに強い歌の力で観客を引きつける昨日のジェイク・バグの姿は、本来的な意味での「フォーク・ミュージシャン」的なものであったと思う。(岸啓介)