突然のニュースにまだ驚いている。
アヴィーチーが、28歳の若さで亡くなった。
体の不調は以前から知られていたことであり、そのために彼は一昨年にDJ活動を引退し、自身の健康に向き合いながら新しい音楽人生を踏み出した。
それが発表されたのが、初めての、そして3度のキャンセルの後の、宿願の単独来日前だっただけに、日本のファンにとっては嬉しいと同時にショックも大きかった。(上の写真は、その時のロッキング・オンのレポート記事)
『ストーリーズ』の時のインタヴューで彼は、「6年間ノンストップで進んできて、一番すごい時は1年間で320~325回ショーがあり、その他は移動日だった」と語っている。だからこそこれからは家族や友人との時間や、人生を見直したい、と。
そして昨年8月には、デジタルEP『AVĪCI』をリリースし、日本では世界唯一となる限定ミニ・アルバムとして『ウィズアウト・ユー』を発表。リタ・オラやサンドロ・カヴァッザ等を客演に迎えた『AVĪCI』は、34カ国の主要配信チャートで1位を獲得した。
その先にある、彼の新しい人生を映し出した、『ストーリーズ』の次なるオリジナル・アルバムを楽しみにしていたのに、本当に残念だ。
アヴィーチーは、曲作りに対して「ナンバーワンになったり、世界に受け入れられたりといった成功は大事だけど、本当に求めていることは、リスナーが後になっても何度も聴き返したくなるような作品を作ることが目標」だと語っていた。「『スリラー』とか『狂気』みたいな作品、僕の究極のゴールもそこなんだ」とも。
そして、最後のアルバムとなってしまった『ストーリーズ』は、まさにそういう作品だった。
DJとして即効力のある多幸感を降り注ぎながら、同時に他人の人生にずっと寄り添うような普遍的な音楽を生み出してきたアヴィーチー。彼の才能に敬意を表するとともに、改めてありがとう、と言いたい。
ご冥福をお祈りします。(井上貴子)