来日が決定したキング・クリムゾン。1971年の闇の傑作アルバム『アイランズ』を完璧に伝えるインタビュー/ドキュメント、2号連続掲載!!

来日が決定したキング・クリムゾン。1971年の闇の傑作アルバム『アイランズ』を完璧に伝えるインタビュー/ドキュメント、2号連続掲載!!

「プロのミュージシャンが山ほどやって来たけど、フィーリングが欠けていた。
ボズは歌いながらベース・パートもちゃんと感じていたんだ。で、感じることができるなら、その感覚が頭から手へ、更に指先へと入っていくのは時間の問題なんだよ」(フリップ)


キング・クリムゾンの来日が決まった! 11月下旬ともなればワクチン接種率も集団免疫レベルに達しているだろうから、このニュースはまさに福音だ。現在のクリムゾンは、プログレ愛好者に限らず全てのロック・ファンが観るべき途方もない価値を獲得しているのだから。

今号から2回連載でご紹介するのは今年5月末公開の最新記事で、1971年の『アイランズ』時代にフォーカスしている。だが単なる回顧ものではなく、御大フリップがクリムゾンの「闇の落胤」として葬っていた同作を40年後に再発見し、頼れる側近ジャクスジクの熱意にも絆されセットリストに組み込むに至った「光への変遷史」に昇華されていくのだ。

この『アイランズ』、じつはフリップの作編曲能力がジャズやクラシックまでもブラックホール的に呑み込んで異次元へ達した作品である。例えば冒頭の“フォーメンテラ・レディ”は、すさまじい重力波で時空に亀裂を生むコントラバスの暗鬱な旋律に始まり、メル・コリンズのバス・フルートと才人キース・ティペットのピアノが馥郁たるリリシズムを奏でて異界への扉を開け、ボズ・バレルのはかなく幽玄なボイスが古代ギリシアの叙事詩『オデュッセイア』にインスパイアされたシンフィールドの詩を歌い上げる。やがてフリップの抒情的なアコギとコリンズの煽情的なサックスが絡み合い、そこにソプラノ歌手ポーリナ・ルーカスの魔女キルケーが憑依したかのようなスキャットがサウンドスケープを淫猥に染めていく。ワーグナーの歌劇やバルトークの管弦楽曲を前衛ジャズでデフォルメしてぐつぐつ煮込み直したかのごときエレガントな修羅……その結末と共にフリップのギターが炸裂する“船乗りの話”へ雪崩れ込んでいく。こんな濃密な物語が全6曲に展開されるのだから、たまらない。再評価されて当然の恐るべき傑作なのだ。

しかし『アイランズ』期は、フリップがバンド・マネジメントに苦しみ、メンバーとの激しい軋轢を抱えていた。とりわけクリムゾン誕生以来の盟友だったシンフィールドとの確執が極点に達し、最後は彼を追放するという最悪の「トラウマの時代」だった。結果、知性の権化のようなフリップの眼を曇らせる40年が続くことになったのだ。この前編では、当時のメンバーたちの証言によって生々しく再現された「クリムゾンの闇」にどっぷり浸っていただこう。(茂木信介)



キング・クリムゾンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

来日が決定したキング・クリムゾン。1971年の闇の傑作アルバム『アイランズ』を完璧に伝えるインタビュー/ドキュメント、2号連続掲載!! - 『rockin'on』2021年9月号『rockin'on』2021年9月号

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