「僕は、あの町で孤独を感じていた。ロックダウンで感じていたようにね。
そして僕は、あの町のはみ出し者やはぐれ者たちについて考え始めたんだ」
『インプローディング・ザ・ミラージュ』からわずか1年のインターバルでリリースされたザ・キラーズの新作『プレッシャー・マシーン』は、高揚感漲みなぎるポップ・アルバムだった前作とは対照的に、地に足のついたリアリスティックなストーリーテリングの1枚となった。
デイヴィッド・キューニング(G)がレコーディングに復帰したのも大きいだろう。ブランドン・フラワーズの少年時代の記憶に温かな血を巡らせるヒューマニックなギターから、ゲストのフィービー・ブリジャーズとの美しいハーモニーを響かせる“ランナウェイ・ホーセズ”の生成りのフォーク・サウンドまで、本作にはネオンが煌めく都会から離れ、ランタンで足元を照らしながら歩く田舎道の郷愁と、彼らの頭上で瞬く星空のように普遍的な音楽が詰まっている。
ブランドンが幼少期を過ごしたモルモン教徒の街の人々や風景が生き生きと描かれる様に、ブルース・スプリングスティーンの『ネブラスカ』を連想する人もいるかもしれない。思えばキラーズは、『サムズ・タウン』の昔からボス同様に「アメリカ」を物語ろうとしてきたバンドだった。ラスベガスの享楽の傍で、それもまた彼らの真実なのだ。 (粉川しの)
ザ・キラーズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。