The xxのオリヴァー・シム、初ソロアルバム『ヒディアス・バスタード』完成。2022年屈指の陶酔感に満ちた充実作は、自己を投影した美しき鏡のような作品だ

The xxのオリヴァー・シム、初ソロアルバム『ヒディアス・バスタード』完成。2022年屈指の陶酔感に満ちた充実作は、自己を投影した美しき鏡のような作品だ - rockin'on 2022年9月号 中面rockin'on 2022年9月号 中面

The xxファン待望のオリヴァー・シム、ファーストソロ『ヒディアス・バスタード』のリリースが9月9日に決まった。サウンドメーカーのジェイミー・エックス・エックスが早くから先発していたソロワーク、昨年はロミーもシングルのリミックス集『ライフタイム・リミクシーズ』やX-girlとコラボしたアイテムを出したりと、各人が積極的に動き出しているだけに待たれていたオリヴァーのソロだが、ジェイミーに背中を押され、彼のプロデュースで遂に2年がかりのソロ作が完成。これが期待をはるかに超える傑作となった。

すでに先行シングル“ヒディアス”も公開されているが、彼にとってヒーローであるジミー・サマーヴィル(ブロンスキ・ビート)が守護天使に扮したMVも最高の仕上がりで(YouTubeにアップされている6月29日ロンドンでのライブでは、ロミーが守護天使となた!)。《あなたの瞳に映った私は醜いでしょうか》と切々と歌うその曲で、17歳でHIVに罹患したことも告白し、その事実に正面から向き合うことで置かれた状況や思いのすべてを音楽へと昇華して聴かせる。

幼なじみであり、共にLGBTQでもあるロミーとオリヴァーによるノンバイナリーなバンドは、この時代の象徴的な存在でもあるが、最大の魅力は美しいメロディーラインをごくシンプルかつ効果的なサウンドメイクで鳴らすところ。今回のオリヴァーのアルバムもその美点はすべて持ち込まれ、さらにスピリチュアルな雰囲気が濃厚に漂う点もインパクトは大きい。

大好きなホラー映画への愛や「恥、恐怖、男らしさというテーマ」を掘り下げたということだが、決してシリアスになりすぎることはなく、遂げられなかった思いなどをビビッドなラブソングに仕立て上げていく。エレクトロポップの親しみやすさを拡張したサウンドと、とびっきりの落ち着いたトーンで迫るボーカルの絡み合いが生む陶酔感は格別だ。

アルバム制作の経緯や狙い、楽曲たちに込めた熱い思いをオリヴァーに直撃したインタビューは次号でお届け出来る予定。 (大鷹俊一)



オリヴァー・シムの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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