この映画にはいくつものクライマックスがあるけれど、ジェフ・ベックが参加して、ミック・ロンソンとツインギターを奏でる “ジーン・ジニー”はたまらないシーンのひとつ!
“フリークラウドから来たワイルドな瞳の少年”や“シグネット・コミティー”、“フリー・フェスティバルの思い出”など、ヒット曲の陰になりがちな初期名曲からボウイの一貫した思想を抽出し、ものすごくエモーショナルに鳴り響かせているのは、サントラではわからなかった嬉しい驚きだ。
あらゆる瞬間に彼の精神や人生哲学がみなぎっていて、『DAVID BOWIE is』と同じようにボウイという宇宙を体験する作品。
夢を見ないで夢になる、とは『ロッキー・ホラー・ショー』の有名なフレーズだが、ボウイを見ずにボウイになって世界を観ているような感覚になる。
公開直後にIMAXで体験し、もう一度観ようと思っていたら上映館が限られていた。気づけば公開から1ヶ月、これから始まる映画館もありますがどうぞお早めに。
映画の予習復習には、ジェフ・ベック表紙号に掲載された監督インタビューと論考をぜひ読んでほしい。情報量がとんでもない本作が、さらに深く理解できます。
そして、現在発売中の5月号には、『ジギー・スターダスト』50周年記念記事を掲載。最初のポップ革命『ジギー・スターダスト』で、25歳で世界を変えたボウイの飽くなきチャレンジに迫る1973年決定版インタビュー。
エキサイティングな日々を、実験を見るように冷静に語る口調はボウイならでは。
5月号が書店に並ぶのはあと3日、機会があれば手にとってご覧ください。(井上貴子)
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