The xxのロミーが待望のソロデビューアルバム、『Mid Air』を9月8日にリリースする。ソロアルバムの制作は彼女がThe xxの中で最後となったが、デビューシングルの“Lifetime”は2020年に既にリリース済みだ。“Lifetime”はロックダウン下でダンスフロアへの渇望を募らせていたロミーの心境を投影したナンバーであり、そのモードは『Mid Air』にも継承されていると言える。先行リリースされたシングル“Strong”がユーロダンス風のバンガーだったように、アルバムもまさに(ロミーが言うところの)「エモーショナルなダンスミュージック」に仕上がっている。
『Mid Air』はロミーがプロデュースも担当し、スチュアート・プライス、フレッド・アゲインと一緒に作ったアルバムで、“Enjoy Your Life”にはジェイミー・xxも参加。大御所(プライス)と気鋭の売れっ子(アゲイン)という対照的な二人とタッグを組んだことで、彼女もThe xxや過去の自分のテイストに縛られないチャレンジに踏み切れたのかもしれない。
The xxを彷彿させるガラージチューンもあるが、よりアッパーなY2Kエレクトロクラッシュやトランス、さらにはイレイジャーやペット・ショップ・ボーイズを彷彿させる元祖80sエレポップまで、ダンスと一言では括れない様々なアプローチが試されているアルバムなのだ。
ダンスミュージックやエレクトロポップが持つ外向性と内向性の対比を表す際に、「フロア」と「ベッドルーム」はしばしば用いられる比喩だ。通常はフロアミュージックとベッドルームミュージックは対立する概念だが、ロミーの『Mid Air』はその二つが不思議と重なる場所で鳴っていると感じる。
クィアのコミュニティに居場所を見出したことが本作の大きな転機となったと彼女は語るが、そうした共同体へのシンパシーが彼女の内と外の境界線を融解させ、パーソナルな想いを投影した本作のソングライティングと、誰もが最初の数キックですぐに身体を揺らしたくなるサウンドを地続きにしたのだろう。約5年ぶりの来日となったフジロックのステージでは、どんなエンパシーの場を作り上げてくれたのだろう。 (粉川しの)
ロミーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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