コナン・グレイが約1年半ぶりとなる単独ツアーで来日を果たした。東京ガーデンシアターで行われた今回の公演はニューアルバム『ファウンド・ヘヴン』を提げてのワールドツアーの一環で、パフォーマンス的にもサウンド的にも前回の『スーパーエイク』ツアーから大きく飛躍した内容だったと言っていいだろう。『ファウンド・ヘヴン』で萌芽した80sサウンドを、まさかここまでド直球でぶつけてくるステージになるとは!
1作目、2作目のインティメットなDIYポップとの整合性をもう少し意識したライブになるかと思いきや、むしろ過去作のナンバーも『ファウンド・ヘヴン』を経た、より肉感的でとにかくリアルな出音にアップデートされていく。80sの中でもエレポップ以上に顕著だったのは、ラウドで華やかなアリーナロック調のバンドアンサンブルで、ボン・ジョヴィやボニー・タイラーを連想してしまったほどだ。
ボロボロに破れた白いバックドロップは、コナン曰く「想像以上に傷ついた」という初めての恋愛、初めての失恋を経た彼の心象風景の象徴だろうし、そのボロ布がバサっと落ちると同時に巨大な星型マークが瞬き始める……という演出にも、《怖がらなくていい、その気持ちは愛だよ》と歌う“ファウンド・ヘヴン”の、トラウマの告白と再生をテーマとした新作のモードの直反映を感じた。コナンは元々溢れんばかりのスター性を持った人だが、今回はチャーミングでフェアリーな常態からよりグラムマラスなロックスターへと傾く瞬間も多々あり、ギタリストと妖しく絡む様は、まるで往年のデヴィッド・ボウイとミック・ロンソンだった。
にしても、ここまで80sな音だとファン層の主体であるZ世代には取っ付きにくいのでは?……なんて余計な心配をしていたのだが、会場を見渡せば新曲も見事に大合唱だ。コナンとファンが足並みを揃えて成長してきたのが彼のファンダムの素晴らしさだと改めて思うし、“ザ・ストーリー”、“ヘザー”といった、かつて彼らのフラジャイルな内省の投影だったナンバーが、心の傷跡も含めて大らかに舞い上がっていく様も感動的だった。(粉川しの)
コナン・グレイの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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