なお今回は、マニラ、ジャカルタ、バンコク、東京、クアラルンプール、台湾と各地を巡るアジアツアーの一環なのだが、3日間もの日程が織り込まれているのは東京だけだ。マルーン5と日本のリスナーが長い時間をかけて築き上げてきた絆が、いかに太く頑強なものであるかを物語っていると思う。
現在のマルーン5は、春と秋にラスベガスでのレジデンシー公演をたっぷりと繰り広げており、これは人気アーティストが「上がり」を迎えたステータスと言っても良いだろう。単にショウビジネスとしては、莫大な予算を投じて世界各地をツアーするよりも、遥かに効率の良いライブ形態である。ところがマルーン5は、がっつりとアジア諸地域を巡り、東京ドーム3発をスケジュールしてしまう。キャリアの中で数々の名曲を共有し、ファンと共に歓喜の規模を育て上げた経験と確かな手応えがあるから、そうするのだ。一朝一夕にはいかない、歴史にモノを言わせる特別な熱狂が、そこにはある。
また、今年は『V』(2014年)の10周年記念プロジェクトが動いていることも興味深い。情緒豊かなソングライティングとロックバンドとしてのダイナミズムをあらためて見つめ直した『V』は、現在のマルーン5による常勝ライブの雛形となった作品でもあるからだ。今や当たり前のように立つ東京ドームではあるが、そこには当たり前ではない紆余曲折と試行錯誤の歴史がある。じっくりと噛み締めて、ライブに備えたい。 (小池宏和)
マルーン5の記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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