日経ライブレポート 「ハイム」

去年のフジロックでも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた三人姉妹バンドのハイム、その初の単独公演。フジロックの時点ではデビュー・アルバムが出ていなかったが、去年9月にリリース。いきなりイギリスで1位、本国アメリカでも6位という新人としては破格の成功を収めてしまった。でも彼女達のファミリー・バンドらしい親しみやすいキャラクターは変わらず、とてもアットホームなステージだった。彼女達自身「自宅のリヴィングルームでジャムしている感じ」と言っていたが、その距離の近さが大きな魅力になっている。

デビュー・アルバムは、まさに今の時代の空気をそのままパッケージしたようなサウンド・デザインで、彼女達の若さや瑞々しさがダイレクトに伝わって来る作品だ。ただそれだけではこのような成功は手に入らない。このバンドの最大の魅力は楽曲の良さ、メロディーの見事さだ。

もともとは父親、母親と一緒に「ロッキンハイム」という、まさに家族バンドをやっていた。そのバンドはクラシック・ロックのカバー・バンドで、三姉妹は幼い頃からたくさんのロックの古典を演奏しながら、音楽を学んでいったのである。だから一見、今時の若い女の子たちが勢いで作ってしまった音のように聞こえるが、そのメロディーを支えているのは豊かなロックの教養であったりするのだ。

でも主役は彼女達の時代感覚であって、過去のロックへの郷愁ではない。その絶妙なバランスが素晴らしい。そして、今のサウンドが今しかなく、きっと次のアルバムには次の時代感覚が反映されている予感がするのも嬉しい。

1月23日、渋谷クラブクアトロ
(2014年2月4日 日本経済新聞夕刊掲載)
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