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    ビリー・アイリッシュの凄さについて

    ビリー・アイリッシュの凄さについて
    上の世代にとっては、頭ではわかっても感覚的にはわからない。あるいはせいぜい「感覚的にわかる、という感覚だけはもてる」ぐらいのものだろう。
    ビリー・アイリッシュは、同世代からの完璧な共感を得て、上の世代からは理解(のようなもの)と高い評価を得て、17歳にしてデビュー・アルバムがリリースと同時に世界中でNo.1になるという、久々の快挙を成し遂げた画期的なアーティストだ。

    デイヴ・グロールが「91年のニルヴァーナだ」と言ったように、ビリー・アイリッシュの本質はセックス・ピストルズやニルヴァーナが出てきた時ぐらい過激なものだが、ピストルズやニルヴァーナが上の世代から評価と同時に嫌悪や反感を招いたのに比べると、ビリー・アイリッシュの表現は大人をあらかじめ手なづける構造になっている。
    ビリー・アイリッシュは決して叫ばないからだ。
    彼女はただ呟くように歌うだけ。
    小さな声で呟く少女は反感すら無効化するのだ。

    だが、彼女の小さな呟き声は、叫び以上に残酷に聴き手に線を引く。
    評価するやつ、理解するやつ、好きになるやつ、共感するやつ、ライブで泣きながら大声で歌えるやつ、ライブには行くけどそれはできないやつ、など、など、など。
    「世界を二分する」ロック以上に切れ味の鋭い、でも全員に等しく正確に向き合う、最強のポップだ。(山崎洋一郎)
    山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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