まあクリープハイプらしいというか尾崎ならやりかねないと思った人がほとんどだと思う。
そして、ほとんどの人をそう思わせたのだとしたらそれはクリープハイプの偉大さの証としか言いようがない。
なぜなら、このJ-POPシーンの中で何百何千というアーティストやバンドが、日本語と取っ組み合いながら歌詞を書いていて、その中のほんの一握りの人たちだけが独自の言葉を生み出して、
その中のさらにほんの数えるほどの人たちの独自な言葉だけが人々に受け入れられ、独自の表現世界をその独自の言葉で語ることができるからだ。
しかも今回は「愛」という言葉のカスタマイズド・バージョンだ。
あまりにも普遍的な「愛」という言葉は、作詞者として最もハードルが高い言葉だ。
ちょっといじったぐらいじゃびくともしないし、少しひねったぐらいじゃサムいものになる。
そこへ真逆の「ブス」という読みを当てて、その意味の隔たりの中に物語を生み出した尾崎世界観の表現力は感嘆に値する。
ただし、それだけ大胆で極端な言葉の組み合わせであるがゆえに、その本意がきちんと伝わるように、丁寧に育てられたメロディーと、考えが重ねられた上でのアレンジメントがその物語をしっかりと守りながら聞き手に届けるように十分に配慮されている。
10年を経た上で、クリープハイプがクリープハイプらしく、尾崎世界観が尾崎世界観らしく踏み出す新たな一歩として、この大胆さと繊細さの見事な両立が素晴らしいと思う。
この曲に込めた思いをしっかりと語ってくれた尾崎世界観ロングインタビューは、現在発売中のロッキング・オン・ジャパン最新号に掲載しています。(山崎洋一郎)