ロッキング・オン編集後記「バンドという方法」

今回の新世代バンド特集を作ってるときに一つ困ったことがあって、それはライターさんが「新世代バンド特集」を「新世代ロック特集」だと思って文章中にロック、ロックと連発されることが多かったということ。その気分はわかるし編集会議で僕もつい「新世代のロックが」と連発したりしたのだが、でも今回はあくまでも「新世代バンド」の特集で、そこは大事なところなので、説明して修正してもらったりした。今の時代に新しい世代が新たにバンドという表現手段を選んでいるということがとても本質的で重要なのだと僕は思う。
おびただしい言葉で自己の物語を描き続けるラッパー、郊外の日常の光景を自己の内面のメタファーとして描き続けるシンガーソングライター、まるで涙を流し続けるように悲しみのメロディーを歌い続けるR&Bシンガー、そうした「個」の音楽が圧倒的主流だった季節がいったい何年続いただろう。バンドの音は、メンバーそれぞれの関係性や差異やコミュニケーションそのものが鳴っている。その音には僕たちリスナーの個の呪縛を解放する不思議な力がある、と僕は思う。(山崎洋一郎)
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