世界最強のロックンロール・シンガー、武道館に降臨!リアム・ギャラガーがソロ・ライブでオアシス曲をやる理由

世界最強のロックンロール・シンガー、武道館に降臨!リアム・ギャラガーがソロ・ライブでオアシス曲をやる理由 - Photo by Mitch IkedaPhoto by Mitch Ikeda

万感の思いが駆け巡った武道館だった。そしてついに、リアム・ギャラガーのソロ・キャリアの最初の到達点を刻んだ、最高のライブ・パフォーマンスだった。今夜披露された17曲のうち10曲がオアシス曲だったのは、ソロ・アーティストとしてのリアムを裏切るものではない。むしろ真逆だ。リアムにとって現在の自分を誇ることと、オアシスに誇りを持つことは当然イコールで、むしろその二つの融合こそが、彼がこの9年、ずっと願ってやまなかったものだからだ。オアシスの名に恥じない世界一のロックンロール・シンガーであると、もう一度証明すること。それがリアムをソロへと突き動かした最大の動機であり、『アズ・ユー・ワー』で見事結果を残したからこそ、彼はオアシスを取り戻すことができた――それが今回のツアーに漲っていた、確信とポジティブなエネルギーの証左なのだ。

“Fuckin' in the Bushes”のSEと共にバンドが登場し、いきなり“Rock 'n' Roll Star”、“Morning Glory”の2連発でスタートするという構成は、昨年の単独&ソニックマニアと同じだ。そしてこの2曲が猛烈にラフでファストなパンク・チューンとしてつんのめりながら爆走するのも昨年同様で、リアムはブレス入れまくりで音も平気で外す、大暴れなオープニングだ。でもこれは現在の彼のライブにおいて言わばウォーミング・アップで、ここできっちり喉を温めてから仕上げていくのだ。その証拠に今回のリアムのボーカルは初っ端から無茶苦茶太く、声量も十分。あとはそれを整えればいいだけで、実際に“Wall Of Glass”の頃には完璧に整えられ、仕上がっていた。

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ソロ曲は厳選された6曲が披露され、前半は『アズ・ユー・ワー』の中でもメロディ・オリエンテッドな曲が集められた、リアムのオアシス後の音楽的進化を伝えるセクションだった。とりわけ“For What It's Worth”はオアシスのクラシックスと比肩する最高のシンガロング・チューン! 仁王立ちのリアムも気持ち良さそうに歌っている。そう、基本は仁王立ちなのだが、この日の彼はかなり積極的に動き回り、客席に身を乗り出し、マラカスでファンを指して「あんたたち最高」と言ったりと、オーディエンスとコミュニケーションを取っていたのが印象的だ。

中盤のハイライトは間違いなく“Champagne Supernova”だった。リアムが同曲を日本で歌うのは2014年のビーディ・アイの横アリ公演以来だが、彼がこの曲をここまで完璧に、普遍的美を隅々まで湛えながら歌ったのを本当に久しぶりに観た気がする。バックはピアノだけというシンプルさが、更に一期一会の瞬間を高めている。会場を埋めたオーディエンスがリアムの歌声を一つも聴き逃すまいと繊細な感覚を研ぎ澄ましているのを感じた。

そう、今回の武道館で印象的だったのが、オアシス曲においてオーディエンスの合唱がここまで影が薄かったオアシスやギャラガー兄弟のライブは、珍しいのではないか?ということだ。もちろん我々は全部合唱しているし、“Wonderwall”ではオーディエンスに歌を任せるパートもあった。でも、あくまでも今回のライブはリアムの歌唱を曲のど真ん中に据えたサウンド・デザインだったと思う。そう、つまりオーディエンスにほとんど全てを託したノエルのサマソニでのプレイとはまさに正反対だったわけだが、この話は始めると長くなるので改めてロッキング・オン本誌で書きます。

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そんなオアシス曲を受けて、続く“You Better Run”、“I've All I Need”はリアムの普遍的ロックンロール・スピリットを伝えるソロ曲のセクションだ。中でも「Angels, give me shelter」、「Stone cold, Helter Skelter」と歌う“You Better Run”は、今の自信と確信漲るリアムでなければ歌えなかったストーンズ愛とビートルズ愛がど直球で炸裂したロックンロール・チューン。オアシス曲→ソロ曲→オアシス曲→ソロ曲と、交互に歌い、互いを補完する。そしてその二つが同価値まで高められているからこそ、ステージに一人立つリアム・ギャラガーは今、こんなにも無敵なのだ。

そしてアンコールはなんと全てオアシス曲!まさにビクトリー・ランの様相を呈してきた。“Supersonic”はこれまた久々にハイ・キーで歌いきった!本当に凄い。ライブの後半に行くにしたがって尻上がりに声の調子を上げていくリアム・ギャラガーなんて、一体何年ぶりのことだろう。マンチェスター・シティのユニホームを着た親子を見つけたリアムはその子にマラカスをプレゼントし、「ちゃんと振れよ?」なんて話しかけている。この段階でも疲れを一切感じさせず、足取りも軽やかでご機嫌だ。ご機嫌なのも当然だろう。最高の声で最高の歌を歌う最高の自分と最高のオーディエンス、しかも舞台は武道館なのだ。

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この日はなんとダブル・アンコールだった。最後にやった曲は“Be Here Now”。この選曲には、1998年のオアシス武道館(『ビィ・ヒア・ナウ』ツアー)から20年の節目を意識したリアムのオマージュと、この日こうして再び武道館に集ったオーディエンスへの感謝と祝福の想いを強く感じた。珍しくサングラスを外したリアムは、その光景を目に焼き付けたかったのかもしれない。

とにかく、2018年のリアム・ギャラガーは無敵です。ソールド・アウトの名古屋、ライブハウス・ギグとなる大阪の盛り上がりも必至、万全のコンディションで臨んでください!(粉川しの)



<SETLIST>
Rock 'n' Roll Star
Morning Glory
Greedy Soul
Wall of Glass
Bold
For What It's Worth
Some Might Say
Champagne Supernova
Soul Love
You Better Run
I've All I Need
Whatever
(Encore)
Supersonic
Cigarettes & Alcohol
Live Forever
Wonderwall
(Encore 2)
Be Here Now
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