2016年のデビュー・シングル“Location”がいきなりセールス400万枚相当の大ヒットとなり、昨年のファースト・アルバム『アメリカン・ティーン』も200万枚のセールスを叩き出し、アメリカの若手R&Bシンガー・ソングライターとしての筆頭格に躍り出ているカリードの初来日公演。かつて同じ会場で観たエド・シーランでも感じたことだが、若いオーディエンスが詰めかけ、パフォーマンス中にひっきりなしにエールと歓声を上げ続ける、本当に熱いライブとなっていて感無量だった。
バンドはキーボード、ギター、ドラムという編成。カリードの楽曲はエレクトロニック・サウンドとビートで構成される超然とした空気を漂わせるものが多いため、今回の非常に肉感的なパフォーマンスがとても刺激的だったし、カリードのやるせないボーカルの存在感もわからせてくれて、あらためてその魅力を味わうことにもなった。
オープナーは“8TEEN”。初めて付き合う女の子に対して、まだ実家住まいのうちに一緒に若さゆえのバカなことをなんでもやってみようよ、とコーラスで歌い上げるところや、こういったモチーフそのものを楽曲にしてしまうこと自体に、感性の新しさを感じ入る曲だが、いきなり大歓声で迎えられ、合唱になっているところに大きな感銘を受けた。
さらにダンサー4人が途中から登場し、ライブの間はダンサーと掛け合いながら観客と触れ合うパフォーマンスが続いた。自身のイメージやビデオの雰囲気などでは、どこか冷やかに、かつ遠巻きに世界を見ている印象がこれまで強かったが、そのストレートなパフォーマンスはとても新鮮だった。
序盤の演目はまさにカリード的な名曲の“American Teen”を抜かせば、“Winter”、“Coaster”、“Therapy”など、カリード独特のもの思いを楽曲に乗せたしっとりめの曲が続き、ある意味で自身の世界観をいきなりぶつけてくる展開でその力業がとても頼もしい。
中盤は自身も客演したベニー・ブランコの“Eastside”なども聴かせつつ、今月リリースしたEP『Suncity』からの新曲も披露することになった。ファルセットでヴァースを歌い上げる“Motion”などは、カリードの独特な受け身で観察的な人間関係がさらに鮮やかに綴られた曲だ。その才能が確かであることを印象づけてくれる曲だが、ライブで聴く歌としてもかなり新鮮で、この先にも期待を持たせてくれるものだった。
聴きどころは終盤の“Location”やアンコールの“OTW”だったが、予想をはるかに超えて懐の深さを感じさせるライブで、この発見がとても嬉しかった。(高見展)