着席式ホールが狂熱のライブハウスに様変わり! フランツ・フェルディナンドのダンス・ロックがまたも勝利した東京公演を観た
2018.11.28 19:29
そもそもの大前提として、オーディエンスを我を忘れて踊らせることに命をかけてきたフランツ・フェルディナンドにとって、着席式で縦に長い東京国際フォーラムはベターな会場とは言えないわけだが、前回フォーラム(2009)では痺れを切らしたアレックスがショウの終盤で「みんな前来ちゃいなよ!」と煽り、一気にオーディエンスが雪崩打ったように、着席会場を強引にライブハウス化してきたのがフランツでもある。
ただし、今回の彼らはもっと戦略的だった。この1年、新作『オールウェイズ・アセンディング』を引っさげて世界中を回り、ライブ・バンドとして油の乗り切っている余裕もあるのか、“Slow Don't Kill Me Slow”でしっとり始まる歌謡ショー的オープニングからして前半はじわじわと熱を溜めていく流れ。その熱を後半に向けて徐々に放出していくメリハリのあるパフォーマンスで、これは5人編成となった新生フランツの人員的余裕と音の厚さが可能にした継ぎ目のない流れでもある。
キーボードとギターを新メンバーのジュリアンとディーノで分け合ったことでより自由に動けるようになったアレックスは、嬉々として客席に突入し、マラカスも振り、相変わらず独自性高めのダンスはモンティ・パイソンのバカ歩きとレレレのおじさんを足して二で割ったみたいな領域に到達。そう、フランツのショウにおいて「笑い」は極めて重要な要素だ。一方、“The Dark of the Matinée”などでは『007』のガンバレル的フォーカス照明が猛烈にスタイリッシュで、これはむしろフォーラムの視界の良さが活かされた演出だった。そう、笑いと同時に「アート」であることも重要なのだ。
そしてもちろん最重要なのは、「踊らせる」ことだ。「今日は最初から総立ちだね、ありがとう」とまずはジャブをかまし、「でも移動するのはどうだろう、危ないんじゃないかな?」なんて駆け引きもしつつ、最終的に「踊りたければ踊っていい、それは君らの自由なんだ」と告げるアレックスはまさに確信犯。
“Feel the Love Go”のディスコ・シークエンスで1階席が狂乱のダンスフロアと化したところでダメ出しの“Take Me Out”、客席決壊でステージ前に芋洗状態のライブハウスが出現!またしてもフランツ・フェルディナンドのダンス・ロックの大勝利となった。(粉川しの)
東京国際フォーラム公演前に行ったインタビューの様子は以下の記事より。