今、女性ギタリストで一番「かっこいい」のは間違いなくコートニー・バーネット。今回の東京公演を観て確信した

今、女性ギタリストで一番「かっこいい」のは間違いなくコートニー・バーネット。今回の東京公演を観て確信した

コートニー・バーネットの渋谷O-EASTでのライブを観て、これほど「かっこいい」という言葉が似合うギタリストもそうそういないと思った。その佇まい、レフティ&フィンガーピッキングで奏でるエキセントリックでラフでブルージーなギターサウンド。ドラムとベースを従えた3ピースの最小限の編成でありながらも、ロックの本質がこれでもかと表出する楽曲たち。まるでヴェルヴェット・アンダーグラウンドのようだと感じる瞬間が何度もあった。あるいはそのリリシズムにはクリッシー・ハインドの潔さも彷彿とさせる。ステージングがそっけないかといえばまったくそんなことはなく、しっかりギターソロで観客を煽るし、歌声にはもちろん妙な媚びは一切ないものの、実は案外ポップでキャッチーだったりと、向かうところ敵なしかと思うほど、完璧なライブだった。2019年、もし音楽好きな女子が「コートニーになりたい」と言ったなら、それはもはやコートニー・バーネットのことを指す。間違いない。

シンプルな、というか、何も特別なセットのないステージのバックに真っ白なスクリーン。そこに3人のシルエットだけがスピーディーに映し出されていく演出も、コートニーの白Tシャツに黒のパンツというシンプルなファッションも、彼女の紡ぎ出すギターの音と歌声とを一層ロックに際立たせていた。赤のジャガーがよく似合う。昨年リリースした2ndアルバム『テル・ミー・ハウ・ユー・リアリー・フィール』が素晴らしかったこともあって、今回の来日は非常に楽しみだったのだが、その予想を上回るステージだった。


その新作の1曲目である、“Hopefulessness”での幕開け。間奏のギターソロが早くも激しい波のように会場中を飲み込んでいく。文字どおり「Hopeful」と「Hopeless」を行き来するような、穏やかさと激情が同居するギタープレイに目と耳が釘付けだった。2013年にリリースし、世界が彼女に注目するきっかけともなった“Avant Gardener”も、その素晴らしいバンドサウンドに歓声があがる。そしてまたもや最新作からの“Nameless, Faceless”では、軽快なギターフレーズとキャッチーな歌をクールにラフに響かせると、続けざまに放ったデビューアルバム収録の“Small Poppies”が圧巻。フリーキーなブルースロックのアウトロで響かせたエキセントリックなプレイに拍手が鳴り止まない。さらに、SSWとして、メロディメイカーとしての良さを実感する“Depreston”には客席もシンガロングで応えるなど、シンプルなロックサウンドの中にも多彩な音楽性を見せつけ、観客をぐいぐいと惹きつけていく。


“Charity”など、シンプルな8ビートのロックサウンドが、バランスのよいポップネスを携えて鳴る場面を見ていると、彼女がこれからもっともっと多くの音楽ファンを魅了していく未来が容易に想像できた。きっとこのサイズの会場で見られる幸運は今日が最後だと思った。この日のラストは“History Eraser”。気だるく吐きすてるようなボーカルとギターリフは「ロック」以外の何物でもない。曲終わりのフィードバックノイズも、自らがバツっと切り上げて、笑顔でさらっとステージを去っていく。最後の最後まで、その佇まいにしびれた。

4ヶ月後にはフジロックでまた彼女のステージを観られるかと思うと、楽しみで仕方がない。(杉浦美恵)
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