『rockin'on』2019年4月号より4月号に掲載されているスラッシュの来日インタビューはもうお読みいただけただろうか？ コンパクトな時間枠のなかでさまざまな名言を吐いてくれた彼の口から出てきた言葉のなかで筆者自身がいちばん印象的だったのは、『ボヘミアン・ラプソディ』を観たかという質問に対する「うん、2回」という素直な回答だった。残念ながら時間が足りなくて何故2回観たのか、どの場面にいちばんグッときたのかなどは訊くことができなかったが、少なくともあの映画を観た彼が「もう一度観なくちゃ」と思ったことは間違いないわけで、それだけでもなんだか彼の人柄がうかがえる気がする。
同記事からは割愛させていただいたが、その際の会話の流れのなかで“最近のお気に入りと、注目している若手バンド”について尋ねてみたところ、彼は次のように答えている。
今の世の中は、ふたたび健康的なロックンロールのアティテュードに溢れているよ。最近、ロサンゼルスに戻った時にレコードを何枚か入手したんだけど、アリス・イン・チェインズの新しいやつはよく聴いてる。とても良い。
ただ、新たに出てきたバンドたちのレコードは、まだ買ってはいない。俺に買いに行こうと思わせるものはまだこれといって出てきていない、ということだ。でも、間違いなく言えるのは、本当に素晴らしいエネルギーに満ちた、まだ誰も名前も知らないような若いバンドが作る新しい音楽が、今後数年の間に続々と出て来るはずだってこと。そう思うとエキサイトしてくるよ。
グレタ・ヴァン・フリートのことも絶賛しているスラッシュだが、ガンズ・アンド・ローゼズのツアーでは彼らがオープニング・アクトに起用されたこともあった。
「そうした前座バンドたちのなかにも注目に値する存在がいたはずですよね？」と訊くと、彼は深く頷き、「うん。なかでもタイラー・ブライアントはクールだな」と答え、さらに「なんだっけ、タイラー・ブライアント＆……ナントカカントカ（笑）」と言う。僕が「タイラー・ブライアント＆ザ・シェイクダウンですよ！」と告げると、彼は「そうそう。彼らもガンズのオープニングを務めてくれたけど、ものすごく良かった」と語っていた。
このタイラー・ブライアント＆ザ・シェイクダウンはガンズのみならず、アクセル・ローズが助っ人を務めていた際のAC/DCのツアーでもオープニング・アクトを務めていた。注目すべき実力派の若手バンドであり、筆者もそのライブを観て惚れたくちだが、このスラッシュの発言から察するに、問題点はバンド名の長さかもしれない。
読者にはタイラー・ブライアント自身についてももちろんだが、このバンドのもうひとりのギタリスト、グレアム・ウィットフォードの存在にも注目して欲しいところだ。その姓からお分かりかもしれないが、彼はエアロスミスのブラッド・ウィットフォードの息子なのである。
http://www.tylerbryantandtheshakedown.com/
息子と言えば、スラッシュの愛息もクラスレス・アクトというバンドのドラマーとして活動している。そこで「そういえばクラスレス・アクトという新人バンドの噂も耳にしていますけど？」と声を掛けてみると、スラッシュはサングラスの向こうの目を細めて笑みを浮かべながら「ああ、そんな連中もいるな」と回答。そして次のように言葉を続けた。
classlessact.com/彼らもレコード契約を獲得しつつあるよ。だから俺もエキサイトしている。最初はうちの息子とギタリストの2人だけだったんだけど、本格的なバンドに進化してきた。彼らの音楽が発展していく過程も見てきたが、とても良いものになっている。
10月にロサンゼルスで俺たち（＝コンスピレイターズ）のオープニングに起用したんだが、すごく良かった。今、新しい曲を増やしていて、本当に素晴らしい曲作りをしていきそうな兆候を見せている。うちの息子は最高にパワフルなドラマーだ。独自のスタイルも持っているし、非常に才能がある。父親だから言うわけじゃないよ（笑）。冷静に見て、本物だと言えるんだ。俺は息子のことをとても誇りに思っているよ。
息子のことを語るスラッシュの表情は、とても柔らかなものだった。とはいえ彼が取材中にいちばん笑っていたのは、ガンズのアルバムを制作するという話が出た時に、筆者が「ここで“いつ？”という言葉は出しちゃいけないんですよね」と言った時だったが。それについての続報にも期待したいところだ。（増田勇一）
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『rockin'on』2019年4月号
