今年も東京レインボープライド開催! プライド・ウィークに聴きたい、現代のLGBTQポップ・ソング10選

今年も東京レインボープライド開催! プライド・ウィークに聴きたい、現代のLGBTQポップ・ソング10選

今年のゴールデン・ウィークも東京レインボープライドが開催される。公式によると、「LGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティの存在を社会に広め、「"性"と"生"の多様性」を祝福するイベント」とのことだが、世界中で開催されるプライド・パレードは、その通り、性的少数者の自由を拡大するのに重要な役割を果たしてきた。日本でも近年はLGBTブームが到来していると言われているが、同性婚がいまだ法制化されておらず、またカミングアウトしている当事者が少なかったりと、まだまだ進んでいない部分も多々あるのが実情だ。そんななか、プライドはお祭であると同時に、何よりもこれからの社会のあり方をみんなで考えよう、という目的がある。

歴史的に多くのポップ・ミュージックがセクシュアル・マイノリティの自由を切り拓いてきたことは周知だろう。そして、人種やジェンダーの多様性が訴えられる昨今にあって、音楽シーンでもさらに多彩なセクシュアル・マイノリティの表現が生まれ続けている。だから、そうしたポップ・ミュージックを楽しむことがじつは、セクシュアル・マイノリティと社会のこれからを考えることとも繋がっていたりする。

ということで、東京のプライド・シーズンに合わせて、筆者のアングルから「いま」を感じるLGBTQソングをいくつか紹介したい。2015年以降かつ、なるべくポップなものをセレクトしたつもりなので、東京レインボープライドに遊びに行くBGMとして活用していただけば。

Janelle Monáe – Make Me Feel (2018)

現代のプリンスことジャネール・モネイの最高にファンキーでポップな一曲。ジャネールは昨年パンセクシュアル(全性愛。相手のセクシュアリティやジェンダーにかかわらず好きになること)だとカミングアウトしたが、この曲ではまさに、すべての性に開かれたセクシーな誘惑が歌われる。今年のフジロックのステージも猛烈に楽しみ。

Frank Ocean - Chanel (2017)

『チャンネル・オレンジ』で同性相手の初恋を明かしたフランク・オーシャン。シャネルのブランド・ロゴとバイセクシュアル性を重ねたこの曲では、「俺の男」への想いがエロティックに吐露される。それはつまり、(長くホモフォビアが問題となってきた)ブラック・ミュージック・カルチャーとゲイ・カルチャーを接続するということで、フランクがいかに現代的なポップ・スターであるかをよく表している。メロウなフィーリングが沁みる名曲。

The Internet - Girl ft. KAYTRANADA (2015)

エロティックと言えば、ジ・インターネットのR&Bのスムースな官能に勝るものもなかなかない。ケイトラナダをフィーチャーしたこのヒット曲で、レズビアンであることをカミングアウトしているシド・ザ・キッドは「マイ・ガール」と艶やかに呟く。多くのラブ・ソングが「ヘテロ向け」であるのが当たり前のこの世のなかで、ひときわ輝いてみせる愛の歌。

Troye Sivan - Lucky Strike (2018)

同性愛を歌うポップなラブ・ソングなら、もちろんトロイ・シヴァンは外せない。このシンセ・ポップ・ナンバーでは「僕の男の子は女王みたい」と旧来的なジェンダーに囚われない想いが解放され、これからの時代のラブ・ソングのあり方を指し示す。イケメンに焦がれる男子にトロイが扮する胸キュンなMVも必見。

MUNA - I Know A Place (2017)

シンセ・ポップは昔からクィア・カルチャーと密接な繋がりがあったが、全員がセクシュアル・マイノリティであることを明かしているLA出身のスリーピース、MUNAはその最新バージョン。「わたしたちが、わたしたちらしく生きられる場所を目指そう」というメッセージが、煌びやかなシンセ・ポップとともに弾けるLGBTQアンセム。

Christine and the Queens - Comme si (2018)

よりポップ・アート的なものを求めている方にはこちらを。フランスはナント出身のエロイーズ・ルティシエはドラァグ・カルチャーにインスパイアされクリスティーン・アンド・ザ・クィーンズを名乗り、ダンスによる身体表現も含めたパフォーマンスを披露する。パンセクシュアルである彼女の、クィアである自身を包み隠さない姿は最高にクールだ。

St. Vincent - Fast Slow Disco (2018)

昨年のプライド月間に発表された、『マスセダクション』収録の“Slow Disco”のディスコ・バージョン。ゲイ・ディスコで汗まみれのベアたちにもみくちゃにされながらアニー・クラークが歌うMVがとにかく最高。ディスコ・ミュージックが歴史的に多くのマイノリティを解放してきたことが、ここでは高らかに祝福されるのだ。

John Grant - Touch & Go (2018)

ゲイ・ベア界の星たるジョン・グラントだが、この曲ではゲイである自分についてではなく、軍の情報を漏洩させたことで逮捕されたトランスジェンダー女性チェルシー・マニングについて優しく歌う。それはSOGI(性指向・性自認)の区分を超えてマイノリティたちが連帯するということを示しており、「プライド」とは何かをほのめかすものでもある。

SOPHIE - IMMATERIAL (2018)

昨今エレクトロニック・ミュージック・シーンではより先鋭的なサウンドがクィア・カルチャーと接近しているが、ソフィーはそのなかでももっともクレイジーな部類。実験的なビート・プロダクションがポップに弾けるこのトラックでは、「わたしはわたしが望む何にでもなれる」というアイデンティティの自由を高らかに宣言している。

Nicholas Krgovich - thank u, next (Ariana Grande Cover) (2018)
https://www.youtube.com/watch?v=oxHeTnj1zRM

最後は少し変わり種を。カナダのシンガーソングライターでゲイであるニコラス・ケルゴヴィッチは最新作『OUCH』で自身の失恋をテーマにしていたが、そのあとアリアナ・グランデの大ヒット・シングル“thank u, next”を洒脱なアレンジでカバー。歌詞にさりげなく自分の名前を入れているが、じつはこの曲、ゲイ・コミュニティのなかでも大人気だという。ポップ・ソングが聴き手のSOGIを超えて受容される好例だと言えるだろう。


もちろんここで挙げた以外にも、現在じつに多くのLGBTQソングが生み出され、そして愛されシェアされている。東京でプライド・ウィークとなるゴールデン・ウィークだからこそ、そのカラフルなポップ・ミュージックを多くの人といっしょに祝福できたら嬉しい。(木津毅)

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