CGになっても変わらない、ダンボの子守唄――GWに必見! ティム・バートン監督映画『ダンボ』は、やっぱり家族の物語だ

体重はすっごく重いのに、瞳はとってもつぶらで、大空をフワフワフワ~って軽々と飛び回っちゃう動物、なーんだ?

答えはもちろん、ダンボ!である。1941年に初めてアニメーション映画が公開されて以来、ダンボは、ディズニーを代表する人気キャラとして、世界中の子供たちに愛されてきた。

今ちょうど公開中の映画『ダンボ』は、そんなダンボの初の「CG実写」リメイク作品。しかも監督は、ハリウッド映画界のゴス・ロック番長こと、ティム・バートン――『シザーハンズ』をはじめ、「他とは少し違うヘンテコな者たち」の物語を作り続けてきた彼にとって、「他とは少し違うヘンテコなゾウ」であるダンボは、まさにうってつけのキャラクターだろう。

今回の映画では、1941年のアニメ映画版とは基本的にまったく違う、オリジナルの物語が展開していく。主人公は戦争で片腕を失い、今ではふたりの子供といっしょに巡回サーカスで働いているホルト(コリン・ファレル)。あるとき、ダンボの世話を頼まれた3人は、その大きすぎる耳が、実は「翼」であると気づくのだけど……!?

1941年版『ダンボ』でのサーカスの描写は、(今の視点で見ると)人種差別/動物虐待的な部分が多々あった。今回の映画はその点をきっちりケアしつつ、オリジナル版の物語のエッセンスだった「母と子の絆」というテーマを、より壮大なファンタジーへと昇華させていく――最近のバートン映画の中ではいちばん「おとぎ話」感の強いストーリー構造で、その点もプラスに作用していると思う。かつて『バットマン リターンズ』でペンギン役だったダニー・デヴィートが、ここではサーカスの団長役を演じてくれているのも嬉しい。まるでティム・バートン監督の「ベスト・ヒット・アルバム」みたいな映画なのだ。

1941年版の『ダンボ』では、お母さんゾウがダンボのために「子守唄」として歌う“ベイビー・マイン(私の赤ちゃん)”という曲が、劇中でとても印象的に使われていた。今回のNew『ダンボ』では、この“ベイビー・マイン”が2種類の新たなアレンジで登場する。そのうちの1バージョンは、映画公開に先駆けてリリースされたPVでも話題となった、アーケイド・ファイアの新録カバーだ。


実は“ベイビー・マイン”は過去にも多くの歌手がカバーしている。たとえばブライアン・ウィルソン。11年に発表された『イン・ザ・キー・オブ・ディズニー』の中で、ブライアンはこの曲をまるで初期のビーチ・ボーイズのようなアレンジでカバーしていた。それから、昨年7月に始まったスマッシング・パンプキンズの30周年ツアーにおいて、多くの会場でアンコールの大トリを務めた曲も、やっぱり“ベイビー・マイン”だった。永遠のイノセント少年、ビリー・コーガンもこの美しい子守唄のファンなのだろう。

アーケイド・ファイアの新バージョンもまた、素敵な解釈のカバーだ。ウィン・バトラーの公式コメントによると、今回のカバーでハープを弾いているのは、ウィンの実のお母さん。テルミンを弾いているのは弟のウィルで、ボーカル&ドラムの担当は奥さんのレジーヌで、トライアングル担当は、まだちっちゃな息子くんなのだとか。バトラー家のファミリー総主演で演奏される“ベイビー・マイン”は、今回の『ダンボ』のラストに、昔からの家族の一員のようにしっくり馴染んでいる。2DアニメからCGに生まれ変わっても、やっぱり『ダンボ』は、家族の物語だ。(内瀬戸久司)


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