パレイ・ロイヤルの初来日公演――次代を担うべき新星がその存在を知らしめた、歴史的一夜を目撃した!

パレイ・ロイヤルの初来日公演――次代を担うべき新星がその存在を知らしめた、歴史的一夜を目撃した! - pic by YUICHI MASUDApic by YUICHI MASUDA

9月9日、パレイ・ロイヤルの一夜限りの初来日公演を目撃した。会場となった東京・渋谷WWWは、100%のチケット完売にまでは至らなかったものの、満員に近い状況。現時点では日本盤CDのリリースすら経ていないというのに、嗅覚の鋭いファンでフロアが埋め尽くされていた。

開演予定時刻の19時半ちょうどに場内は暗転。そしてオープニングにいきなり炸裂したのは、なんとザ・ストゥージズの“I Wanna Be Your Dog”のカバー。前日、渋谷TOWER RECORDSでインストアのアコースティック・ミニ・ライブを実施した際には、「明日はパンクなライブになるぜ!」と予告していた彼らだが、まさしくその言葉通りのスリリングな爆裂具合にオーディエンスは狂喜乱舞。ショウ自体は、結果的にはアンコールも含めて1時間にも満たないきわめてコンパクトなものに終わったが、食い足りなさよりも清々しい爽快感のほうが遥かに上回っていた。考えてみれば、ニルヴァーナの初来日公演(1992年)もこれくらい呆気ない演奏時間だったものだ。

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セバスチャン(G)、レミントン(Vo)、エマーソン(Dr)の3兄弟からなるこのバンドは、ライブでは3人のサポート・ミュージシャン(ギター、ベース、ピアノ奏者)を加えた6人編成で演奏。そのサウンドは『Boom Boom Room (Side A )』(2016年)、『Boom Boom Room (Side B)』(2018年)という過去2枚のアルバムからも想像される通り、グラマラスかつパンキッシュでカラフルなもの。しかも彼らはステージ狭しと動き続け、一瞬たりともその場に静止していることがない。気が付けばレミントンは柵の上に立っていたり、フロアでファンに揉みくちゃになっていたり。その運動量の多さを両眼で追うだけでも大変なほどだった。しかも演奏はタイトだし、少々クセのある歌声もめちゃくちゃ強力ときている。3人とも90年代生まれで、ことにエマーソンはまだ22歳という若さだが、さすがは百戦錬磨のライブ・バンドである。余談ながら彼らは、この夏にはマリリン・マンソンロブ・ゾンビのカップリングによる北米ツアーのオープニング・アクトを務めており、公演前夜に話を聞いた際にレミントンは「どちらも僕が聴いて育ってきたバンド。とても光栄だった」と語っていた。

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3人とも初めての日本を相当に気に入ったようで、曲間のMCでは「アリガトウ」と「アイ・ラブ・ユー」を連発。終演後のミート&グリートも、ロックスター然としたオーラとフレンドリーな空気を漂わせながら和やかに行われた。繰り返しになるが、今現在、このバンドの作品は輸入盤でしか手に入れることができない。しかし今回の東京公演は、この次代を担うべき新星の存在をこの国のロック・ファンに知らしめるうえで有効なショウケースになったのではないかと思えるし、この夜のライブ・パフォーマンスの素晴らしさ自体が、ファンの間で語り継がれていくことになるだろう。


まさに、目撃したことが翌日から自慢できるようなライブだったし、この最新型ファッション・アート・ロックスターたちの姿に今回のような至近距離で触れることのできる機会は、今後もう訪れないのではないかという気もする。実はすでに次なるアルバムも録り終えているという彼ら。2020年の台風の目になる可能性は、充分すぎるほどにある。是非その存在に注目しておきたいところだ。(増田勇一)
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