初来日で武道館公演、いまでは殆ど考えられない快挙を成し遂げたのが75年のクイーンで、それを追うようにして達成したのが4年後の79年3月にやってきたジャパンだった。
T・レックスやデヴィッド・ボウイ等グラム・ロックの遺伝子を受け継ぐメイクやファッションに、まるで『ヤング・アメリカン』期のボウイが憑依したかのファンク感覚を踏まえた華やかなサウンドに鋭く反応したのが、日本の女性ファンたちで、デヴィッド・シルヴィアンを筆頭に美しい美青年バンドはイギリスのはるか以前に人気は爆発したが、そんな彼らへの改めて再評価の波が大きくうねりだしている。
そのあまりの人気ぶりに<Big In Japan>と本国イギリスでは揶揄されたりもしたが、そんな彼らの転機となったサード・アルバム『クワイエット・ライフ』(79)がDX版でリリースされた。オリジナル盤も手がけたロキシー・ミュージックとの仕事などで知られるジョン・パンター自ら行ったハーフ・スピード・リマスターに加え、12”ミックスなどのレア音源、そして2回目の来日公演(80)ライブからなる3枚組ボックス・セットだ。
イギリスでは4枚目にしてオリジナルではラスト・アルバムとなった『錻力の太鼓(Tin Drum)』からの“Ghosts”がようやくシングル・チャート5位と初のヒットとなり、音楽的な評価が本格的に高まっていく流れの中での突然の解散は残念ながら、その後のメンバーの活動を見ると、それもやむなかったとも思える。
アンビエント色を強めていったボーカルのデヴィッド・シルヴィアン、元バウハウスのピーター・マーフィーとダリズ・カーを組んだりもしたベースのミック・カーン、そしてYMOファミリーとの交流も深いドラムスのスティーヴ・ジャンセンなど、それぞれの道で音楽性を深めていった。
『ロッキング・オン』4月号では、スティーヴ・ジャンセンに『クワイエット・ライフ』当時のことを中心にインタビューを行っているが、初来日の大騒ぎでの戸惑いなど、率直に語ってくれて興味深い。
今でもあの武道館に響き渡った嬌声、そんな中でのシルヴィアンの耽美的な歌声、ミック・カーンのバンド全体をリードするかのファンキーなベース、全体を引き締めていたジャンセンのドラミングなどは記憶に鮮やかだが、彼らほど見るたびに音楽性を深化させていったバンドも珍しかった。
デュラン・デュランやスパンダー・バレエを始めとしたニュー・ロマンティックの波を先導した部分も、今ではきちんと評価されているが、そんなバンドをいち早く捉えていた日本の聴き手たちのセンスもまた改めて見直されるはずだ。(大鷹俊一)
ジャパン、スティーヴ・ジャンセンのインタビューは、『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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