ストレイテナーの音楽にはふたつの魅力がある。ひとつは、激しく震え、聴く者の胸に直接訴えかける熱の情緒的快感。そしてもうひとつは、破格のプレイヤヴィリティに支えられた堅固なアンサンブルと、そこから生まれ、肉体に直接響く器楽的快感だ。彼らはロックに誠実に向き合う中で、このふたつの武器を徹底して研ぎ澄ませてきたバンドだ。そして彼らは誠実だからこそ、時にふたつがけん制し合い、バランスが良すぎると感じる瞬間もあった。翻って本作は、彼らのふたつの武器がためらいなく同じ方向に疾走し始めたと感じる作品だ、結果、ストレイテナーの音楽はあらゆる境界を溶かしていった。感情はより冷熱の起伏を増し、構造はより自由奔放に組み立てられている。昨年10周年を迎え、次のディケイドに向かう第一章として最良のかたちがここにはある。《We've got to break the world record(俺たちが世界記録を破るんだ)》と歌う“The World Record”も、《僕は宇宙空間で / 世界が変わるのを待っている》と歌う“Breaking Ground”も、彼らの視点が内外共に極みに近づきつつあるのを象徴している。(粉川しの)