前作が『Reach to Mars』だったのが、今作の『Return to Earth』というタイトルに繋がったらしいが、そんな洒落っ気も感じるこの1枚の中に広がるものはとても生々しい。ヴィンテージ感のある温かい音色、臨場感に満ちた響きで彩ったロックサウンドで描いているのは、なかなか思い通りには前進出来ていない人物の格闘の物語だ。ハッキリと目標を見据え、そこに向って威勢よく突っ走るのとはまた別の闘い方。息苦しい霧の中を何度も躓きながら手探りで進んでいるかのようなホロ苦いファイティングポーズが各曲で浮かび上がる。

例えば“Message from the front”は、今年最も老若男女に支持されたある曲へのアンサーソングであるように感じた。「自分らしさ」という耳当たりの良い言葉に甘えない姿勢が示され、ハッとさせられる。様々な葛藤の末にこのアルバムが辿り着く心情、結論は、決して全面的に晴れやかではない。しかし、仄かに漂う希望の気配が、聴き手にも救いを分け与えてくれる。活動のフィールドをインディーズに移して数年経ったFoZZtoneの実像とも重なる、とても説得力に溢れた作品だ。（田中大）