成熟が訪れたんだ

GRAPEVINE『Burning tree』
2015年01月28日発売
ALBUM
GRAPEVINE Burning tree
行き着いた。キャリア18年目、13枚目のフルアルバム。完璧な成熟の証明だ。

“光について”を代表とする、青く混沌とした初期。“少年”などに象徴される、自身の痛みを密かにさらけ出した生々しい中期。そして田中和将が辿り着いたのは、「もう精神世界上の旅しかできない」(ブックレット『10+1LYRICS』)という事実だった。バインの音楽は、その世界観における「主人公」としての音楽から、既に獲得してしまったものを基盤とする旅物語の「書き手」としての音楽へと変化した。そして、『TWANGS』以降、前作までに築いてきたその「旅」へのスタンスは、本作で完成を迎えている。

曲の構成やスケールはもちろん、特筆すべきは田中の「声」だ。物語の一端を担う楽器としての「声」は、田中の文学的トリックから生み出された主人公たちの心の揺らぎ、焦燥、歪みを見事に表現している。これまで以上に高まったこの表現力を、田中はきっとまた「曲が呼んだ」と言うだろう。しかしそれは田中が完全に「精神世界上の旅」を受け入れたからこそだ。完璧な成熟という到達点を示す、18年目の最高傑作。(林田咲結)
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