ブルーハーツを語ることはすなわち、自分の人生を語ることであって、曲を聴くたび、そのときどきの自身の生活や心情に思いを馳せずにはいられないところがある。彼らの音楽が表現する、ある種の孤独感や疎外感や喪失感が、少年から大人になる時期の葛藤や苦悩を映し出す。それはいつの時代でも、誰にとっても不変であり普遍的なものだ。
とはいえ彼ら、特にヒロトとマーシーはそうして特定の世代を代弁するアイコンであることを拒否するようになり、ここに収められているようなメッセージ色の強い曲は作らなくなった。過去を決して振り返らない彼らが、今後ブルーハーツの曲を歌うことはないだろう。ブルーハーツの曲は、CDでしか聴くことができない。だがアーティスト本人の手を離れて、曲は生き続ける。人生の真実は間違いなくここに息づいている。(小野島大)