『Live at 日本武道館』会場に時計の秒針の音が響き、スクリーンに志村正彦の姿が映し出されると、会場中の人々が、ぐっと涙を堪えたような気がした。フジファブリックにとって初めての武道館公演は、その長く険しい10年を背に、メジャーデビュー曲“桜の季節”で幕を開ける。
公演の約3ヶ月前に発売された8枚目のアルバムのタイトルは『LIFE』だった。生活。人生。命。音楽を続けていく上で向き合わざるを得なかったテーマを掲げたこの作品によって、彼らはあの「喪失」に触れることをはじめて許したように思えた。
この日、山内総一郎(Vo・G)は堰を切ったように、バンドや、お客さんや、志村への思いを口にした。3人でフジファブリックを動かし始めて約5年。『LIFE』を携え、武道館の地に立ったことで、彼らは過去を大地として踏みしめ、歩み出す覚悟が出来たのだと思う。アンコールで初披露された新曲の“はじまりのうた”、そしてこの日を締め括ったのは3人だけで初めて作ったアルバムの1曲目“STAR”だった。10年と言う歳月を超えて、フジファブリックはここからもう一度「はじまる」。(安田季那子)