灰色の世界を肯定する「虹色」の根拠

The Cheserasera『YES』
発売中
MINI ALBUM
The Cheserasera YES
バンド名と同じ意味のタイトルを冠した前作『WHATEVER WILL BE,WILL BE』がそうであったように、今作もまたThe Cheseraseraにとってのセルフタイトル作なのかもしれない。「なるようになるさ」という楽観性を突き詰めた先に辿り着いた究極の肯定、つまり大文字の『YES』。しかしそれは単なる夢想家の空論ではなかった。大きく翼を広げたメロディが飛翔する”賛美歌”。この曲で宍戸翼(Vo・G)は《さらば 理想のユートピア》と歌う。長きにわたる全国ツアーの中で彼らが目にした現実は、決して肯定すべきものだけではなかったはずだ。今作が描いているのは、不信、不和、不条理に満ちた灰色の世界だ。それでもこの7編の歌は、その中でも確かな輝きを放つ《君》や《僕ら》の物語を丁寧に紡いでいる。共に今を生きることの喜びを歌う“Youth”に顕著なように、彼らは今作でリスナーの明日を鮮やかに照らそうとしているのだ。《そして何も語らない/微笑んでもくれない/七色の虹が僕を見てる/行こう》(”灰色の虹”)。そして僕はこの7曲目に、「世界を肯定してみせる」という彼らの揺るぎない信念を見た。(松本侃士)
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