10thアルバム『TWANGS』以降の6年間、GRAPEVINEを表すキーワードのひとつとして「成熟」があった。実際彼らは、バンドのグルーヴを極め、歌にフォーカスを合わせ……とひとつずつ深化し、前作『Burning tree』でひとつの完成型を提示した。ある種、バインは「行きついた」のだ。そんな彼らが次にどこへ向かうか楽しみにしていたところに、今作が届いた。一聴してわくわくした。どこか往年のバインを彷彿とさせるのだ。鍵になるのは、近年大々的に打ち出してこなかった「王道」=青く切ないメロディの存在感。奥ゆきある音像の中に光が溢れる“EAST OF THE SUN”と、“マリーのサウンドトラック”(5thアルバム『another sky 』収録)を想起する音を取り入れた“UNOMI”。2曲とも高野寛がサウンドプロデュースを手掛けており、抜けがいいメロディが際立つアレンジが見事。そしてグルーヴも歌の求心力も、すべてが成熟しているからこその安定感ゆえに、無闇に若さを求め回帰したのではない、ハイブリッドな「進化」として響く。この方向性で作られたアルバムを、是非とも聴きたい。(塚原彩弓)