もうひとつの極限

コールドプレイ『ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ』
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ALBUM
コールドプレイ ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ
年の瀬も押し迫ったタイミングで、とんでもないアルバムが到着してしまった。まず第一のとんでもなさは、コールドプレイ自身のキャリアにおけるドラマティックな振れ幅の点だ。極端から極端へ、ミニマルかつモノトーンな『ゴースト・ストーリーズ』から、マキシマムかつカラフルな本作へと一気に針が振り切れている。前作の外部功労賞はアヴィーチーだったが、本作は主にR&B、ポップ界隈で活動するプロデュース・チーム、スターゲイトだろう。彼らとのコラボによって本作ではR&Bやエレクトロ・ファンク、ディスコ・ビートと新機軸が次々と試され、その一方で前作ではほぼ禁じ手になっていた旧来のスタイル、ピアノ・ロック、ギター・バラッドの叙情もフル再開されている。そして新旧どちらのスタイルも、見事にアッパー&ポジティヴな空気を貫徹していて迷いがない。また、前作中で異彩を放っていた“ア・スカイ・フル・オブ・スターズ”の過剰なまでの昂揚が本作へのブリッジであったことに気づくと共に、『ゴースト・ストーリーズ』を本作との連作として聴き直すと、全く異なる景色が見えてくるはずだ。

本作の第二のとんでもなさは、前述のようにあくまでもコールドプレイのパーソナルな物語としての振れ幅だったはずのものが、そのまま超パブリックな物語の爆発に転じていってしまう点だ。ビヨンセやノエル・ギャラガーまで巻き込んで、彼らの個の表現がいつの間にか世界そのものを、万人を巻き込んでいく、そんなポップ・ミュージックの魔法を体現しきった一枚なのだ。(粉川しの)
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