完璧な53分47秒の快感

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『ザ・ゲッタウェイ』
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ALBUM
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ ザ・ゲッタウェイ
デンジャー・マウスと組んでいると聞いたときから胸騒ぎを感じていたが、その鼓動をすべて最良、最強、最善のパルスに書き換える傑作だ。キャッチーさとファンクやグルーヴ、サイケといった言葉が聴くたびにぐるんぐるんと巡っていくが、どれも極めてクオリティが高く、サウンド・スタイルやデザインに甘える部分がいっさいなくシャープだ。デンジャー・マウスの起用は大正解だった。無駄な部分が極限までそぎ落とされ、エッジを切り立たせて進む潔さが快感を膨らませていくが、キャリア33年にも及ぶグループにこれが出来るというのは、いかにバンドの状態が良いかを表している。

聴き進むほどに、最初に用意していた曲を一から見直し徹底的に作り込んでいったというアンソニーの話が実感として迫ってくる。それほど曲に細部のこだわり、アレンジとポップ・ミュージックとしてのマジックが施されているのがわかって魅力的だ。どの曲もシングルでいけるほどキャッチーだが前半にコンパクトな印象のナンバーが並び、だんだんと骨太な構成やスケール感を持った曲へと流れていく展開も、曲そのものやバンドの充実度が自然に導き出した答えなのだろう。どれか一曲を挙げて語るのがいやだからあえて曲タイトルは出さないようにしてきたというが、それほど全曲のレヴェルが高く、彼らのキャリアを語るとき必ず挙げられる一枚となった。53分47秒がこれほど短く感じられたのは久しぶりだし、これは俺たちだと思ったというジャケを見ながら聴いているとなぜか泣けてくる。(大鷹俊一)
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