デビュー5周年日にリリースされるニューシングル。その内容はメモリアルイヤーで盛り上がるというテンションではなく、一刻も早く次のステージに向かいたいというポジティヴな焦燥感ともいえる気概を随所に感じさせる。その鍵を握っているのは、やはりバンドの首謀者である成田ハネダである。リード曲の“メーデー”はパスピエの王道的なオルタナティヴロックのダイナミズム、ポップネスが軸にありながら、アンサンブルの交わり方、各パートのプレイやフレーズの際立たせ方、メロディの動かし方に新しい風を吹かせている。少しずつバンドの王道をスライドさせているこのアプローチに、成田のバンド内プロデューサーとしての彗眼を見る思いだ。さらに作詞クレジットには大胡田なつきと並んで成田の名前があり、《そろそろ本気出せますか/猜疑心こそ罪じゃない?》というフレーズは、バンド内に向かっているのではないか?とさえ想像させる緊張感がある。2曲目の間奏におけるクラシカルなピアノソロ、3曲目の自由度の高いリミックスワークも含めて、成田ハネダの野心に満ちたシングルだ。(三宅正一)