初めて感じる本当の「ソロ」

ピート・ドハーティー『ハンブルグ・デモンストレーションズ』
発売中
ALBUM
ピート・ドハーティー ハンブルグ・デモンストレーションズ
ピート・ドハーティにとってリバティーンズ、ベイビーシャンブルズ、自身のソロは明確に区別できない「ひとつ」の表現であり続けてきた。リバが不調な時はベビシャンが心臓代わりとなるし、カールとの関係が拗れている時はソロで思いの丈をぶちまける。そうやってピートは稀代の詩人の荒ぶる魂、無限の表現欲求と向き合い続けてきた人なのだ。7年ぶりのソロ新作となる本アルバムはリバティーンズの再結成と『リバティーンズ再臨』の制作を経て久々の安定期の中で作られたもので、結果として過去最もパーソナルな一枚となっている。リバと自分をいちいち相対化しないでも今の彼は還る場所としてのリバを常に感じられるのだろうし、だからこそ存分に自身の内へと掘るアプローチを楽しんでいる。タイトルにあるように、本作はハンブルグでレコーディング。ヨーロッパを気ままに転々とするボヘミアンな生活を続けていた近年のピートの自由を象徴するように、フォーク・バラッドからパブ・ロック、優美なクラシックからモリコーネ的ドラマツルギーとくるくる表情を変える各楽曲の作りは繊細でありながら、鳴りはどこまでもオープンだ。(粉川しの)
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