『葡萄』のシーズン以来、久々にバンドとして動き始めたサザンの第一手となる配信シングル。映画『空飛ぶタイヤ』の劇場公開に合わせてリリースされた。約3年ぶりの音源リリースということもあり、アップリフティングで景気の良いサザンを期待してしまうところだが、大手自動車メーカーのリコール隠し問題を脚本に据えた映画のテーマ曲らしく、内容はシリアスで重い。エキゾチックな旋律に哀愁を忍ばせたブルージーなナンバーであり、《悲しい噂 風の中／悪魔が俺に囁いた／この世はすべて裏表／嘘と真実の化かし合い》と切り出される歌の主人公は、真実の訴追に右往左往する側の立場だと思える。“闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて”というタイトルは、それ自体が企業戦士たちへの痛烈なメッセージだ。我々の生活を経済神話が支え、神話を空虚な嘘が支えているという構造が次々に暴かれる今日、サザンの最新フェーズがこの歴史に深く蔓延った社会のブルースと向き合うところから始めなければならなかったことは重要だ。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018にも13年ぶりの出演決定。闘うサザンが観たい。（小池宏和）