本稿執筆時には、USツアーの只中にある
[ALEXANDROS]。2年ぶりとなる待望のニューアルバムだ。タイトルからはブルックリン滞在期間中の狂熱が読み取れるし、アレンジャーには元
パッション・ピットのアヤド・アリ・アダミーをはじめ、21世紀のオルタナサウンドをリードしてきた人物たちがクレジットされている。しかし、このアルバムがただ海外シーンの今をなぞる内容かと言うと、全然違う。これは、彼らが音楽シーンの最先端を描く街のエネルギーに身を晒し、己を照らし合わせることで完成した、歴史上のどこにも、世界中のどこにも存在しなかったロックアルバムだ。魂のフィルターを通して叩き出されたサウンドだけが詰め込まれている。冒頭の陶酔感溢れるエレクトロを絡めた官能的な“LAST MINUTE”から、爆発的な上昇気流に乗る旋律“アルペジオ”。壮麗にして美しい実験“ハナウタ”から丹念に音像を制御してみせる情熱の形“PARTY IS OVER”と、膨大なアイディアが溢れ返っているのに迷いが一切感じられない。この情報量とスピード感がもたらす、痺れるような体験こそが今のロックだ。(小池宏和)