さあ、ラジカセの出番だ

プリンス『ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス』
発売中
CASSETTE TAPE
プリンス ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス

1995年以降にリリースされたプリンスのディスコグラフィーの中でも、現在は入手困難となっている作品をさまざまな形態でリイシューしていこう!という主旨のもと、今年2月に始まった「LOVE 4EVER」プロジェクト。その第3弾となる本作は、95年の夏にパリで開かれたヴェルサーチのショーで、来場者のみに配布された「幻のカセット・テープ」(限定500本)を完全復刻したもの。しかも、CDでもLPでもなく、あえて「カセットのみ」での復刻だ。

内容的に言うと、本作はそもそも販促用の「サンプラー盤」として企画されたもので、95年の後半にリリース予定だったプリンス関連の楽曲が「ちら見せダイジェスト」的に寄せ集められている。計10曲は『ザ・ゴールド・エクスペリエンス』(隠れ名盤、ですね)からの楽曲。ただし、その多くは別リミックスだ。さらにザ・ニュー・パワー・ジェネレーション名義の3曲、マッドハウス(※ソニー・Tらと組んでいたジャズ・フュージョン寄りのインスト・バンド)名義の2曲も加えられ、全体では15曲が収録されている。

では、なぜそんなものが配布されたのか? 1995年と言えば、プリンスが自らを「(通称“ラヴ・シンボル”)」と名乗り始めた年であり、彼にとって「再出発」イヤーとなった年でもある。数ヶ月後に発売されるアルバムの曲をショーの会場でばらまくという、一生に一度の大胆不敵なプロモ作戦を試みたのも、裏を返せば、それだけ「確信」があったということなのだろう。1995年の夏、プリンスは最高潮に昂ぶっていたのだ。

その興奮を、ショーの観客気分で、カセット・テープの音源で追体験できる今回のリイシュー。95年にパリへ行けなかった人も、今度こそは、乗り遅れのないように。 (内瀬戸久司)



詳細はSony Music Entertainment (Japan)の公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

プリンス ザ・ヴェルサーチ・エクスペリエンス - 『rockin'on』2019年6月号『rockin'on』2019年6月号
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