もう一つの『時は消え去りて』

ニール・ヤング・アンド・ストレイ・ゲイターズ『タスカルーサ(ライヴ)』
発売中
ALBUM
ニール・ヤング・アンド・ストレイ・ゲイターズ タスカルーサ(ライヴ)

なんと7年ぶりとなるクレイジー・ホースとのニュー・アルバム『Pink Moon』を準備中というニール・ヤングだが、それで騒ぐ前に昨年12月にリリースの『ソングズ・フォー・ジュディ』に続くアーカイヴ・シリーズの新作として、73年のライブが出てきた。名盤『ハーヴェスト』(72年)を録ったベン・キースらによるストレイ・ゲイターズと73年初頭から行った、いわゆる〈Time Fades Away Tour〉からの音源で、正直言って、これを出してくれるとは思っていなかったので、やたら嬉しい。

というのもこのツアーからは73年のアルバム『時は消え去りて(Time Fades Away)』が出されており、これが全曲新曲、しかもライブというニールならではの尖った一枚。多少の音楽的な不具合は意に介さずリリースしたのだが、当時の保守的なメディアには理解されず、酷評されたりもした。そのせいもありニール作品の中では最後までCD化されなかった因縁のアルバム。本盤は、同ツアー前半部の73年2月5日アラバマ州タスカルーサのアラバマ大学で録られたライブなのだが、なんとこの数日後、ドラムスのケニー・バトレーが、ハード・スケジュール&ギャラの問題で降りてしまいジョニー・バーベイタに代わるのだが、『時は消え去りて』は基本、ジョニーがドラムを叩いた音が中心で、最初にニールが構想したサウンド・テイストはケニー時代に聴けると、以前からマニアの注目度は高かった。

そのツアー、“孤独の旅路”などのヒットで人気者となったニールにとっては、初めてアリーナ・クラスの大会場を巡るというもので、最初のアコースティック・セットが会場によっては集中して聴かれないこともありナーバスになっている日もあるのだが、この日は大学内の会場とあって和やかな雰囲気のなか歌声が会場に広がっていく。だからこそ“オールド・マン”やノラ・ジョーンズのカバーでも知られる“ドント・ビー・ディナイド”など、力の入ったナンバーでの振り絞るような歌声が印象的だし、当時、南部の差別的な人々への批判を込めて歌った“アラバマ”を、その中心地とも言うべきところで披露したことに対する会場の熱い反応なども聴きもの。

前記のように『時は消え去りて』は、ツアーにおける新曲ばかりで構成されていたが、実際にはもちろん人気曲、ヒットも演奏したわけで、本作でそこらを聴くことができ、さらにずいぶんテイストの違うドラマーのバージョンによって、より立体的にこのツアーが感じられるようになった。ニールの「旅路」は、まだまだ続いていく。 (大鷹俊一)



詳細はWarner Music Japanの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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ニール・ヤング・アンド・ストレイ・ゲイターズ タスカルーサ(ライヴ) - 『rockin'on』2019年7月号『rockin'on』2019年7月号
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